男子は、3年ぶり47度目出場の能代工(秋田)が65-58で別府溝部学園(大分)に競り勝った。佐藤侃(なお、3年)が3点シュート5本を含む25得点を奪えば、205センチウガンダ人留学生をマークした新田由直(3年)も14得点など攻守に貢献。04年以来遠ざかる日本一での完全復活に向け、総合力で戦う「能代スタイル」の光明が見えた。

全員が走って、守って、シュートを打った。47-47と追いつかれた第3クオーター(Q)終盤。ウガンダ、中国の200センチ超え留学生を擁して初出場した新鋭校との差は、総合力と集中力だった。能代工は佐藤の3点シュートで同Qを3点リードで終えると、第4Qも連発。同終盤にも佐藤、高橋日向(3年)が連続で3点シュートを決め、突き放した。

試合前に右足首痛を抱える須藤陸(2年)の温存が決定。11人がコートに立って躍動し、接戦をものにした。素早いパス回しで相手守備を惑わせ、フリーの選手をつくり続けた高橋は「5人だけじゃなく、誰が出ても良い仕事はできるのが能代工。それを練習から当たり前に1年間やってきた成果が出た」と充実の表情。苦しい場面でシュートを決め、177センチながらチーム最多9リバウンド。「走るバスケ」で国内58冠を歩んできた伝統は、しっかりと引き継がれている。

昨年6月から指導する小野秀二コーチ(60)は、能代工の基盤を築き上げ、今年3月に死去した加藤廣志元監督(享年80)の教え子でもある。当時の経験は伝えつつ、選手の自主性も強調。すべて答えを出すのではなく選手に考えさせる時間も重要視。選手同士が本音でコミュニケーションを取れるようになることで、試合中の対応力も飛躍的に成長した。

今大会はユニホームの左肩に喪章をつける。同コーチは「子どもたちは純粋に取り組んでいるし、高校時代を思い出す。僕は同じ人間なので、やり方は変わらない。原点には加藤廣志の血が流れています」。名門復活を期待されているが、今年も全国総体、国体ともに16強止まり。満足するはずがない。

今日26日の3回戦では、全国総体準優勝の中部大第一(愛知)と対戦する。今年5月の能代カップでは外国人留学生2人に20得点以上をともに奪われ、72-96で完敗。新田は「リバウンドがいかに取れるか。全員で執着心を持ってやっていきたい」。勝って完全復活への階段をまた1歩、駆け上がる。【鎌田直秀】