「サオリの道」を歩む! レスリング女子でオリンピック(五輪)3連覇の吉田沙保里さん(36)が10日、東京都内で引退会見に臨んだ。

8日に33年間の現役生活を終える発表をし、公の場で心境と今後について語った。唯一あこがれた存在として挙げた柔道女子で五輪2連覇の谷亮子さんは政治家に転身したが、自身は「全くございません」と「ヤワラの道」には進まず。指導者に加え、大好きと話すバラエティー番組出演を熱望するなど、女性金メダリストとして“前人未到”の活躍を目指す。

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涙はなかった。午後2時過ぎに会見が始まり、45分後に「第2の人生も明るく笑顔で元気に頑張りたい」と締めくくるまで。吉田さんは今後の決意を体現するように、笑い、笑い、笑いで言葉をつないだ。ポニーテール姿に、白いジャケットで「ありがとうございました」と深々お辞儀をし、節目の時間を感謝で終えた。

「結婚のご予定は?」「ないです!」と“食い気味”に即答してニヤリ。会場を和ませるのはお手の物。「いえ、私は全くございません!」ときっぱり否定して、再びニヤリとしたのが政界進出を問われた時だった。政治家について聞かれたのは、1つ前の回答が谷亮子さんに関してだったから。

影響を受けた人物を「私が五輪に出たいと思うきっかけは、柔道のヤワラちゃん。あこがれた選手はヤワラちゃんだけかな」と答えていた。04年アテネ五輪の選手村、2連覇直後の田村(当時)の選手村の部屋へ押しかけ「ずっとあこがれて金メダルを目指してやってきました」と自己紹介。メダルを触らせてもらい、「パワーをもらった」とそこから3連覇の偉業を遂げる秘話を明かした。

谷さんは引退後に参議院議員となったが、自身が目指すのは違う。「バラエティーが好きで、とにかく笑って笑顔でいたい。向いているのかな。何かあったらお願いします」とテレビ局にお願い。いまも芸能活動に精力的だが、マット上と同じようによりぐいぐい攻めにいく構えだ。

同時に現在も務める日本代表コーチを継続。「精神的に支えたい」と後輩に思いを寄せた。女子レスリング界は、恩師の栄前至学館大監督と、盟友の伊調の間でパワハラ問題が起き、ゴタゴタは解決していない。「(選手が)悩んで思い切り練習できないことや、試合で力を発揮できないこともある。東京に向けて1つになって頑張らないいとけない」と改善に乗り出す。

引退を決意したのは昨年末に全日本選手権でテレビ解説をした後だった。「やり尽くした。若い選手が世界で活躍するのを見るのが多くなり、バトンタッチしても良いのかな」と気持ちが固まった。「レスリング一筋できたので、レスリング以外のことも。女性としての幸せは絶対につかみたいな」と結婚、出産も楽しみにする。笑顔が満開だった花道は、「サオリの道」の船出となった。【阿部健吾】