<テニス:全豪オープン>◇23日◇メルボルン◇男子シングルス準々決勝

世界1位のしたたかさを見せつけられた。第1セット第1ゲーム。ジョコビッチはラブゲームでサービスをキープしたが、その最終ポイントだった。10回のラリーの末に錦織のフォアは大きくアウト。この時点でジョコビッチは錦織の右脚の異変とフォアショットの乱れを察知したに違いない。

続く第2ゲーム。ジョコビッチは錦織の10本のサーブをすべてリターンしている。第1サーブを7本決められたが、確実な返球からラリーに持ち込んだ。無理をしなくてもボールをつなげばミスを誘えるとの判断だろう。錦織がミドルのボールをフォアに回り込まず、バックで処理したこともジョコビッチの戦術を後押ししたはずだ。

2人の対戦は通常、バックのクロスの打ち合いからストレートへの切り返しの勝負になる。しかし、この試合でジョコビッチは早めに錦織のフォアにボール運び、左右に振った。まるで真綿で首を絞めるように錦織のダメージを負わせてギブアップに追い込んだ。

冷酷なまでに勝負に撤し、錦織をつぶしにきたジョコビッチ。この男を乗り越えない限りグランドスラムの優勝はないことをあらためて思い知らされた。(亜大教授、テニス部総監督)