24年パリ・オリンピック(五輪)の追加種目候補にブレークダンスが決まったことで、日本ダンススポーツ連盟(JDSF)は22日、都内で記者会見を開催した。

昨年10月のユース五輪で金メダルを獲得した河合来夢(17=神奈川・百合丘高2年)と銅メダルの半井重幸(16=大阪学芸高2年)も制服のまま駆けつけた。2人は5年後の「金メダル獲得」を宣言し、会見後には即興のダンスも披露した。

1日で平穏な日々が大騒ぎになった。慣れない会見の中、2人は戸惑いながらも1つ1つの質問にしっかりと答えた。ダンサーネームRAM(ラム)こと河合は、ブレークダンスが五輪候補に挙がったことに「率直にうれしい。自分たちの力だけでなく先輩方が土台を作ってくれたおかげ」と喜びを語った。

普段は人見知りで人前が苦手という河合。ブレークダンスのおかげで、強気な内面の部分を出すことができるようになったという。

ダンスを始めたのは5歳の時。母・令子さんが高校時代に運動が苦手で、自分の子どもには何かさせたいと思い、河合を近くのダンススクールに通わせたという。練習嫌いだった河合は泣いてばかりだった。小学生になり、母と五輪の体操やテニスをテレビで見ていて「いつかブレークダンスも競技になるといいな」と話した。10歳で初めて大会に出場したが予選落ち。トップ選手を見て悔しさが込み上げ、世界を目指したいと思うようになった。

現在所属するダンスチーム「ザ フローリアーズ」のTAISUKEにあこがれ、門をたたいた。海外にも出るようになり「本場のダンスは全然違う。盛り上がりもすごい」とレベルの差を実感する。それでも同世代の中でずばぬけた能力が認められ、男性ばかりの中に高校1年で1人だけメンバーに抜てきされた。17年ドイツ世界大会ではチームの3連覇に貢献した。

現在は近くの大学のサークルと一緒に練習をしているが、それまでは地元の駅前広場などで練習を重ねてきた。練習場や遠征の資金を稼ぐため、焼き肉屋などでアルバイトも経験。家族に迷惑をかけまいと高校に通いながらも自立した生活を送ってきた。

Shigekix(シゲキックス)こと半井は、7歳の時、現在も世界で活躍する姉の影響でダンスを始めた。「姉がかっこいいと思っていて気付いたら始めていた。楽しいからうまくなりたいと思って続けていたら日本一になり、世界の大会で優勝していた。ユース五輪に連れて行ってもらって自分も成長できたし、(五輪)種目の1つになる可能性ができたことはうれしい」と笑顔で話した。

まだまだ一般的には、認知度の低いブレークダンス。魅力を聞かれた半井は「回るだけ、踊っているだけではない。音楽と一緒に踊るミュージカリティーや技のオリジナリティーを意識している」と話す。

競技を始めたころには予想もしていなかった五輪。世界で活躍する2人が目指すのはもちろん金メダル。河合は「若い人だけじゃないから少し自信がないけど、正式決定したら絶対に金メダル取りたい。目標は今もこの先も変わらない」。半井も「ユース五輪で全力で戦って銅メダルだった。でも次の日からもっと上を目指したいと思って取り組んでいるので自信がある」。まだ制服が似合う2人の高校生は、パリ五輪までブレークダンス界を引っ張り、世界一になる青写真を描いている。【松熊洋介】