【ハーグ(オランダ)=エリーヌ・スウェーブルス通信員】ショートプログラム(SP)2位の紀平梨花(16=関大KFSC)がフリー1位の141・90点を記録し、合計208・34点で優勝、今季国際大会6戦全勝とした。前日23日のSPで2回転半となったトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を冒頭に成功。世界選手権(3月20日開幕、さいたまスーパーアリーナ)では3回転半3本の成功で初優勝を狙う。SP4位の樋口新葉(18=東京・開智日本橋学園高)は合計186・24点で3位だった。

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紀平の集中力は、軸が傾いた3回転半をきっちりと成功させた。前日のSPでは2回転半のミスだった大技で流れをつかみ、2本目のアクセルは「ミスをしたら焦りも出る。朝に決めていた」と2回転半-3回転トーループを選択。冷静さを備えた負け知らずのフリーで「本当に自分の最高が出せた。すごくうれしい」とガッツポーズが出た。

今大会も一筋縄ではいかなかった。SPは珍しい回転不足などもあり、今季最低の66・44点。一夜明けた午前の練習は寒い屋外で「乾いた、硬い氷だった」と戸惑った。それでも「横滑りして危ないから、あまりジャンプは確認しないようにした」。最善の道を見つけ、本番で結果を出した。

ジュニア時代はカメラのシャッター音、氷の感触など、繊細な感覚が狂うと演技が大崩れすることが多かった。だが、シニア1年目の今季はフリーで4度もトップにはい上がった。その違いを16歳は「今は試合で学ぶっていうか、『試合中の努力』を使えば、練習で不安が出ていても、その時に集中すれば跳べるんだなっていうのがある」と分析する。浜田美栄コーチの目は「元々運動能力、センスがある子。やっと気持ちとマッチしてきた。たくさん大舞台に立つ経験をしたので、前は集中力がなかったのが、落ち着くようになりました」。世界選手権に向けて「フリーみたいな気持ちで、ノーミスでできるようにしたい」とSPで教訓、フリーでは自信を得た。

昨年末はもろくなった靴の調整に苦労。今月は左手薬指を亜脱臼する試練があり「今季は万全じゃない状態での演技が全てだった」と苦笑いで振り返る。だからこそ、今季国際大会無敗でも「グランプリファイナルも『(SP前に)今回だけは取り返しがつかない』と思って演技した。世界選手権はショート(プログラム)から決めないと、自分の中でも悔いが残る」と出遅れからの逆転がパターン化した今に危機感を抱く。

世界女王に向けた大きなテーマは、今大会1本のみだった3回転半を、SP、フリーの計3本成功させることだ。「『(世界選手権は大会前に)今回は万全でいける』というように持っていきたい。そうしないとアクセル3本は難しい。全てのジャンプをクリーンにして(3回転半)3本決められる世界選手権にしたい」。帰国後は息つく間もなく米コロラド合宿へ出発。いよいよ総仕上げに入る。