フィギュアスケート男子の羽生結弦(24=ANA)が、王者奪還へ4回転ジャンプを全制覇する。世界選手権で銀メダルを獲得してから一夜明けた24日、さいたまスーパーアリーナで会見を行った。今大会では3種類の4回転ジャンプを跳んだが、同じ3種類でもより難易度が高いジャンプに成功したネーサン・チェン(米国)に届かなかった。勝利のために成功者のいないアクセルを含め、残り3種類のジャンプを来季以降の演技に導入することを決意した。

フリーから一夜明けた羽生は、さっぱりとした表情で、スモールメダルセレモニーに参加した。3000人のファンが見守る中、司会から睡眠時間を聞かれ「3時間ほどです」と言い、驚かせた。「仕事がいっぱいあったのと、反省会です。振り返ったら汚いジャンプだらけだった」と尽きない向上心をのぞかせた。

現状では勝てないと悟った。12・53点差を追いかけたフリー。4回転ジャンプを3種類4本跳び、今できる最高の演技を披露した。しかし、同様に3種類4本跳んだチェンに、合計で22・45点差と点差を広げられた。チェンと同じ基礎点が高い4回転ジャンプの必要性を痛感。来季への挑戦を問われると「やる気ではいます。全部。ルッツも、フリップも、アクセルも頑張ります」と言い切った。まずは17年シーズンを最後に封印しているルッツを復活させ、フリップに着手した後、最後にまだだれも公式戦で成功させていないクワッドアクセル(4回転半)を完成させる。

SPが行われた21日に、現役引退を表明したイチローについても言及した。野球好きだけに「素晴らしいバッティングセンスや盗塁とか走塁のセンス、ベースランニングのセンス、あの肩…。語り出したら止まらない」と興奮気味に話した。野球選手としては体があまり大きくないところに自分を重ね、さまざまな言葉に影響を受け、支えにもなったという。「すごく自分勝手ですけど、引退会見を見て希望の火をいただいた」。日米通算4367安打を放ったレジェンドの勇姿を原動力に、4回転ジャンプ全制覇へ突き進む。

会場で行われたエキシビションでは、優雅な演技で観客を魅了した。柔和な表情を見せながらも「強い相手を見たときに沸き立つような、ぞわっとする感覚をもっと味わいたい。その上で勝ちたい」と、闘争心を内に秘める。さらに強い羽生を、ここからまた作り上げる。【佐々木隆史】