12年ロンドンオリンピック(五輪)柔道女子78キロ級代表の緒方亜香里さん(28=了徳寺学園職)が28日、千葉・浦安市の了徳寺大で現役引退会見を行った。

パンツスーツ姿の緒方さんは、緊張した表情で会見場に現れた。額から汗が垂れ落ちる中、17年間の競技人生をこう振り返った。「柔道は自分を表現するものだった。自分を信じ、貫いて五輪に出場できたのは本当に良かった。全力で柔道人生を全うできた」。

一番の思い出は、初優勝した13年全日本女子選手権を挙げた。14年ぶりに最重量級以外での優勝となり「自分の歴史、女子柔道界の歴史に名を残せた。本物の日本一になって、『こんなに力があったのか』とも感じた」と、しみじみと思い返した。

ロンドン五輪以降は、けがに悩まされた。右膝の手術とリハビリを繰り返し、思うような結果が残せなかった。そんな中、自身の経験からトレーナーを志すことを決意し、16年4月に医療専門学校へ入学。競技と勉強を両立する生活を3年間続けて、柔道整復師の国家資格を今月取得した。4月から都内の「みどりクリニック」で勤務し、患者さんを相手にテーピングや包帯などのケアを学ぶ。将来は、17年世界選手権52キロ級金メダルの志々目愛(25)や同銀メダルの角田夏実(26)らが属する了徳寺学園女子柔道部のトレーナーとして“現場復帰”を目指す。「世界選手権や五輪を経験して選手の気持ちは分かると思う。次はトレーナーとして支える側で選手に必要とされるような人になりたい」。

明るい性格で柔道部の仲間たちに愛されるムードメーカーでもあった。昨年9月に芸能界を引退した歌手安室奈美恵さん(41)の大ファンでもあり、余興で踊りを披露したり、最後の試合となった昨年11月の講道館杯でも「Finally」を聞いて心身を落ち着かせた。柔道部の山田利彦監督も「まっすぐすぎるぐらいまっすぐの性格だけど、畳の上に上がると獲物に向かっていくような闘争心を持っていた。後輩たちの良い見本になってくれた」と賛辞の言葉を贈った。会見中、緒方さんの止まらない汗を山田監督が拭いて、報道陣の笑いを誘うなどして良き師弟関係も垣間見られた。

五輪や世界選手権などの大舞台を幾度と経験し、今後、強豪チームを支える上で緒方さんはこう締めくくった。「トレーナーとしても世界一を目指します。ますます、目が離せない緒方にこれからも注目してください!!」。最後まで“らしさ”を貫く28歳の柔道家が、第2の人生のスタートを切る。