20年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックを契機とした東京・明治神宮外苑の再開発で建て替える秩父宮ラグビー場について、複数の民間業者がアリーナ化する計画を政府に提案していることが16日、分かった。ラグビーで使用しない期間を多目的に使用。室内競技や音楽イベント、アイスリンクへも転換できフィギュアスケートも行える。収益化が見込め、持続可能な全天候型施設を目指す。

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新秩父宮は東京の中心にありながら、ラグビー専用の稼働日数では年間70~80日程度で施設の黒字化は見込めないため、複数の民間事業者が秩父宮アリーナ計画を発案した。アリーナとは全方位密閉の屋根付き施設。全天候型にすることで、稼働率を上げ、収益性を高める。

秩父宮を所管する日本スポーツ振興センター(JSC)と明治神宮、三井不動産、伊藤忠商事の4者が2月、秩父宮と神宮球場を入れ替えて建設することで基本協定を締結した。東京五輪後の21年から神宮第2球場を解体し、22年から跡地に新秩父宮の建設を開始。秩父宮の跡地に新神宮球場を建てる計画が進められてきた。

新秩父宮、新神宮球場ともに、所有者が建設費を負担する方向だが、それぞれ約200億円と見込まれる未利用容積率分の「空中権」を伊藤忠商事、三井不動産に売却し、財源とする検討がされてきた。

しかし、関係者によると、200億円程度では、従来のラグビー場のようなスタジアムしか造れず、多目的使用はできないという。そこでアリーナ化計画を提案している複数の民間企業体は、500億~600億円と見込む建設費用について出資者を募り、民間資金調達で賄う考え。既に複数社が手を挙げているという。所有者は文部科学省の管理法人であるJSCだが、運営会社を民間が担う。

想定する収容人数は1期工事で約2万1500席。神宮球場解体後に空いたスペースに2期工事で増設し、約2万5000席とする。

スポーツ先進国の米国などではアリーナビジネスが発展。多目的の利用で稼働率を上げている。さらに、富裕層をターゲットとしたホスピタリティー席を充実させ、収益性を高めている。新秩父宮アリーナ構想でもそれらをモデルとする。あくまでラグビー優先だが、使用しない場合はバスケットボールなどの室内競技、音楽イベント、日本では多大なる集客が望めるフィギュアスケートなどを開催する案だ。

日本では02年サッカーW杯など、世界的スポーツ大会に合わせて「ハコモノ行政」が多発し、大会後の赤字に苦しむ自治体が多く出た。新秩父宮構想ではその二の舞いを防ぐよう、東京五輪の持続可能なレガシー(遺産)を創出したい考えだ。

◆明治神宮外苑の再開発経過

11年2月 老朽化した国立競技場の建て替え計画がスタート。

同7月 20年東京五輪立候補を表明し、新国立競技場を主会場として位置づける。

13年6月 同地区をスポーツクラスター(集積地)とするため都は、神宮外苑地区地区計画を決定。

15年4月 東京都、JSC、明治神宮、三井不動産、伊藤忠商事など地権者ら7者で再開発の覚書を締結。

同11月 都が五輪後の神宮外苑地区における民間主体の街づくりに向けた指針を公表。

19年2月 7者協議が行き詰まり都など3者が離脱。4者で基本協定を締結。