高校3年生の橋本大輝(17=千葉・市船橋高)が、男子史上2人目の高校生での体操世界選手権(10月、ドイツ)代表入りを決めた。

この日はあん馬で3位。4月の全日本選手権、5月のNHK杯に続く最終選考会で、残り2人となっていた選考条件を満たし、13年の白井健三以来となる快挙となった。内村、白井らリオ五輪団体金メダル組が落選する中、スタミナ抜群で安定感が武器の新世代が登場した。男子は他に神本雄也(24)、女子は松村朱里(18)が初代表入りした。

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19年が明けた1月の1つの会話が17歳の少年を変えた。ナショナル強化合宿、日本のトップが集う場で、橋本は水鳥男子強化本部長に今年の目標を聞かれた。

「高校3冠です!」の宣言に、「日本代表メンバーを狙ってきてほしい」の要請。それが分岐点となった。わずか半年、この日代表発表を受けて日の丸をつけたジャージーをまとった。「あまり実感がない」と初々しい顔でほほ笑むまで一気に駆け上がった。

乾いた砂が水を吸うようだった。中学までは練習器具も決して潤沢ではない佐原ジュニアに所属。高校入学後に、急成長が訪れた。中学まで世代別代表にもなっていないが、大竹監督は「身体能力が光るものがあった。体力は『無限君』」。1回の練習で何度も試技できる体力、やれるまで粘れる精神力に目を見張った。いま使う技の90%はこの2年で習得した。水鳥監督からの期待で、さらに吸水力を増した。

誰よりもやる練習の自信が演技の安定を支える。この日のあん馬でも、前の演技者に失敗が続く中、E難度も技を重ね、出来栄えのEスコアはトップ。失敗の少ない安定感は、10月のドイツでも戦力になる。代表の「実感がない」発言の直後に、こうも言った。「これがゴールじゃない。やっとスタートラインに立てた」。視線の先の未来も「無限君」だ。【阿部健吾】

◆橋本大輝(はしもと・だいき)2001年(平13)8月7日、千葉県成田市生まれ。3人兄弟の末っ子で、現在も現役の拓弥、健吾が体操していた関係で6歳で始める。

千葉・市船橋高では18年高校総体個人総合優勝など。あこがれは田中佑典で「小4で初めてテレビで見てきれいだと思ったから」。得意種目はあん馬、跳馬、鉄棒。164センチ、54キロ。