<テニス:ウィンブルドン選手権>◇4日◇ロンドン郊外オールイングランド・クラブ◇男子シングルス2回戦

錦織の完璧な勝利だった。すべてのプレーが高いレベルで安定していたが、この試合で私が最も注目したのはサーブだった。サービスゲームの最初のポイントを確実に獲得することで、常に優位に戦える状況をつくり上げていた。

最初に打つジュースサイド(右側)からの第1サーブをコース別にきれいに打ち分けていた。特に左利きのノリーのバックハンド側を突くスライスサーブは効果的だった。

錦織のスライスサーブには2つの球種がある。野球で例えると「カーブ」と「スライダー」。縦に沈んでバウンドするボールと真横に流れるように滑るボールでノリーのリターンのタイミングを狂わせた。第2サーブも含めて変化球の巧みな使い分けと制球力が、3球目攻撃につながるチャンスボールを呼び込んだ。

サービスゲームが安定すればリターンゲームへの集中力も高めることができる。錦織のこの試合のリターンゲームの得点率は53%。ノリーのサーブにプッシュやブロック、ハードヒットと精度のリターンで対応し、半数以上を得点に結びつけていた。2人の第1サーブの確率がほぼ同じだったにもかかわらずワンサイドゲームになったのは、サーブとリターンを軸にショットの質に大きな差があったからだ。今の錦織に隙は見当たらない。(亜大教授、テニス部総監督)