男子主将の瀬戸大也(25=ANA)が、チームのピンチに緊急参戦した。

五輪切符がかかった男子800メートルリレー予選に、左肩を痛めた江原に代わって「おとこ気出場」。日本は高橋、松元、吉田、瀬戸の順番で、7分9秒23をマークして全体の9位。予選12位に付与される東京五輪出場枠を獲得した。

25日夕方、選手村の一室。選手、スタッフ全員で緊急ミーティングが開かれた。リレーメンバーの江原が23日朝に左肩の痛みを訴えたこと、本人は出場を志願もチームドクターのストップがかかったこと、そして代役として男子主将の瀬戸が出場することになった。

江原は16年リオデジャネイロ五輪800メートルリレー銅メダリスト。リレーチームの精神的な柱が、無念を押し隠して「すみません」と口にした。

その時、瀬戸は200メートル個人メドレー決勝を控えていた。最終の28日には金メダルを狙う400メートル個人メドレーも控える。もともとレースから逆算して、分刻みで食事や補食の時間を計画。大会前から、どのタイミングで取材エリアでの対応をするか、まで決めている。予定にないレースは、スケジュールの変更を余儀なくされる。チーム関係者は「大也の400メートル個人メドレーにかけたい気持ちもわかっていた」と心配していた。しかし一方で五輪切符もかかっている。そんなムードの中で、ポジティブ男はこういった。

「(金メダルを獲得した)13年バルセロナ大会も15年カザン大会もリレー予選を泳いだので、いい験担ぎと思って泳ぎます!」

周囲が驚くほど前向きな言葉に、男子最年少19歳で初出場の吉田も「大也さんが余裕を持って泳げる順位で帰ってきます!」と意気込んだという。

瀬戸はミーティングの後に臨んだ200メートル個人メドレーで日本人初の金メダルを獲得した。そしてこの日朝も「今日1本パーンと泳ぐと、疲労も抜けると思うのでいいと思います!」と明るい言葉で、リレー予選に臨んでいた。