8人による決勝で女子は森秋彩(15=茨城県連盟)が3位となり、日本勢最年少で表彰台に上がった。この日は5位だった野口啓代(30)が05年大会で樹立した16歳でのメダル獲得を更新した。

持ち味の持久力と粘り強さが生かせる得意種目で6人目に登場すると、小柄な体を駆使して高みに挑んだ。中腹で「足を間違った」ときつい大勢で修正を余儀なくされながらも体の向きを正反対にして耐え切ると、疲労が蓄積した腕を振りながら高度を稼いだ。あと少しで2位が見えただけに、「悔しさが70%、うれしさが30%」と喜びも控えめだったが、野口の記録更新を知らされると、「うれしい。今後のモチベーションになります」とわずかにほほ笑んだ。

苦しい時の粘りは、日頃の練習方法の成果だという。壁を登って四肢がきつくなったところで行うのはクールダウンではなく、アップ時を同じメニュー。「アップと同じなのに落ちる」という過酷な状況で追い込んできた。「メンタルで苦しい時に耐える」力を蓄えてきた。

野口からは、「小さいころからすごく努力家。登り方は好きで、応援したり、見たりしている」と評価されている。世界の表彰台を射とめ、次に狙うのは東京五輪代表の座。実施されるのはリードに加え、ボルダリング、スピードの総合成績で競う「複合」で、20日に行われる決勝で7位以内の日本勢最上位選手が内定する。リードの前に行われたボルダリングでは予選落ちし、「焦っていた」という心も、このメダルで落ち着きを取り戻す。「気持ちが前向きになりました」と五輪切符に手をかけにいく。

◆森秋彩(もり・あい)2003年(平15)9月17日、茨城県生まれ。小学生時代から国内大会で活躍し、16年に12歳で出場した「リード・ジャパンカップ」で優勝。W杯に今年デビューし、7月のリード開幕戦(スイス)で3位。ボルダリングでも5月の中国大会で3位。154センチ。