パワハラ問題で解任されていたレスリング女子の元日本代表監督の栄和人氏(59)が至学館大(愛知)の監督に復帰する。20日、至学館大が発表した。オリンピック(五輪)4連覇の伊調馨(35)らに対するパワハラ問題で日本協会強化本部長を昨年4月に辞任し、同6月には同大の監督を解任されていた。12月の全日本選手権(東京)で指揮を執る。

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今回の監督復帰は至学館大内の人事であり、日本代表とは別だ。ただ、有力選手を輩出する名門だけに、東京五輪が迫るなか、今後は日の丸を背負う教え子たちのコーチにつく可能性は高い。その時には、指導法をいかに改善できたのかについて、説明する必要があると考える。

日本協会は昨年4月、第三者委員会に依頼した調査で、伊調らを巡り過去10年間で4項目のパワハラ行為を認定した。「俺の前でよくレスリングができるな」「目障りだ。出ていけ」など、代表監督という肩書を背にした横暴な発言があったのを確認している。そのような言動の再発はないのか、審査は必須だ。承認機関である強化本部会、理事会の対応が問われる。

もし復帰の理由が東京五輪で好成績をとることにつながるなら、それは誤りだろう。確かに9月の世界選手権では女子は大きな成果を挙げられなかった。ただ、それと栄氏の復帰は別であるべきだ。行き過ぎたメダル至上主義が、しっかりとした審査をおざなりにしての早期復帰を後押しする構図は正常とは言えない。

至学館大でも現役選手、OG全てが復帰を歓迎したわけではない。従来の優れた指導力に、監督を離れていた期間で培ったプラスアルファを加え、まずは身近な教え子の信頼を得ていくことが大事ではないか。【レスリング担当=阿部健吾】