奮闘したが、頂点には届かなかった。御所実のプロップ島田彪雅(ひゅうが、3年)は、ノーサイドの笛で泣き崩れた。

「我慢はできていたけど…。強みのディフェンスが対応できなかった。でも気持ちで負けたとは思ってないです」

花園にかける思いを、決勝の舞台で出し切った。島田は16歳で東海大大阪仰星を退学。1度はラグビーを辞めた。不登校にもなったが、仲間に救われた。チームメートのSO高居海靖(3年)が、島田家のインターホンを毎日鳴らした。「彪雅くん、一緒にラグビーやりましょうよ。16時からの練習、来てくださいよ」。心にラグビー熱がよみがえった。1学年下の高居と一緒に勉強し、御所実に入学。同じ黒色ジャージーを着た。

高居は言う。「彪雅くんは中学のときから僕の憧れだった。自分にもしんどいときはあると思う。一緒のユニホームでラグビーがしたかったんです」。3年間、切磋琢磨(せっさたくま)した。結果は花園準優勝。結果に泣いたが、胸に悔いはない。

涙をぬぐい、島田は前を向いて話す。「御所実に来て、人間として成長できた。正直、1年生の最初はしんどいときもあった。でも、みんなが仲良くしてくれて…。学年は違うけど、みんなは“弟”みたいだった」。自分を救ってくれた仲間への「感謝の涙」だった。【真柴健】