新型コロナウイルス感染拡大で東京オリンピック(五輪)は1年延期となった。選手が来夏の祭典で獲得を目指す五輪メダル。各競技でどのような歴史が刻まれてきたのか。「日本の初メダル」をひもとく。

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カヌー競技における日本人初のメダルは、アジア勢としてもスラローム種目初の快挙となった。まだ記憶に新しい2016年リオデジャネイロ大会。スラロームの男子カナディアンで銅メダルをつかんだ羽根田卓也(当時29)は、「メダルなんて誰も想像していなかったと思う。でも僕はずっと世界一になりたいと思ってきた」。3位確定の瞬間、艇上で歓喜の涙を流した。

トップから約3秒相当差の6位で準決勝を終えたあと、腹をくくった。このままでは表彰台に届かない--。決勝では限界ぎりぎりまで速度を上げつつ、懸命に、そして冷静に艇を制御。高校卒業と同時にスロバキアへ単身移り、本場欧州で磨き上げた漕艇技術を駆使した。ゴールタイムは7番目ながら、旗門接触や不通過によるペナルティーをゼロに抑えたことがメダル獲得に直結した。

座右の銘は「千日の稽古をもって鍛となし、万日の稽古をもって錬となす」。剣豪・宮本武蔵が『五輪書』に記した金言を胸に、羽根田は鍛錬を積み重ねる。東京大会では、さらに光り輝く色のメダルを狙っている。