ランニング時はマスクを着けて-。そんな多くの人が守っているマナーに一石を投じそうな提言が出された。

日本臨床スポーツ医学会と日本臨床運動療法学会は6日、オンラインで会見を開き、「屋外運動時のマスクや口鼻を覆うものの着用は、基本的には推奨いたしません」との共同声明を発表した。

その前提としては、可能な限り少人数かつ、また2メートル以上のソーシャルディスタンスを保つことが重要としている。もちろんロッカールームや更衣室などは「3密(密閉・密集・密接)」になりやすいため、注意を呼び掛けている。

両学会によると、マスクは運動中には激しい換気によって形状が変化する。ランニングなど換気量が増大し、前面からの気流を直接受ける状況下では、安静時と同様の機能をマスクが果たせるか-。その十分な検討はなされていないという。また特に屋外では、呼吸による飛沫はすぐに蒸発するとのデータがあり、「ソーシャルディスタンス」があれば、感染拡大は防げるとの見解を示した。

その一方で、運動時のマスク着用は呼吸を制限することや、顔面の皮膚血管拡張により熱の放散を妨げることにより、熱中症や呼吸不全の危険性が高まるとする。それにより海外では死亡した例も確認されており、危険だと強調する。厚生労働省と環境省も熱中症予防の観点から、負荷がかかる作業や運動時に屋外で他人と2メートル以上離れられる場合は、マスクを外すよう求めているとする。

「ウィズ・コロナ時代」で新しい生活様式が求められる今、マスクをせずにランニングなどすれば、周囲から白い目で見られてしまうという不安がある。日本臨床スポーツ医学会の山沢文裕副理事長は「屋外での運動実施への誤解や、運動時にはマスク着用が有用であるという認識が高まっている」と述べた。

両学会で理事を務めている木村穣氏は「日本社会はエチケットマナーが厳しい。走っている現場で注意をすることがある。アスリートは若い人が多く、高齢の方に注意されると反論できない。根拠のない感覚的な事で注意で言われている。非常に危惧を持った」と今回の声明に至った経緯を説明した。

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発表された共同声明は以下の通り

1 運動は、ストレス・生活習慣病・認知症・要介護等の予防・改善に極めて有効です。高齢者や有疾患者、障がい者の方も主治医に相談した上で、これまで通り実施してください。

2 屋外運動時のマスクや口鼻を覆うものの着用は、基本的には推奨いたしません(熱中症や呼吸不全の危険が高まる可能性があり、海外では死亡例もあります)。

3 新型コロナウイルスはすれ違った程度では感染しないと言われていますが、空いた場所や時間を選び、少人数(できれば一人)で、信号待ち等も含め2メートル以上のソーシャルディスタンスを保つようにしてください。

4 ロッカールームや更衣室などは、3密(密閉・密集・密接)になりやすいので特に注意し、使用後のタオルは他人が触れないように気をつけてください(汗からの感染はありませんが、鼻や口も一緒に拭くことでウイルスが付着する危険性があります)。

5 高強度・長時間の運動後には、一時的に免疫機能が低下することがあり、感染予防に気を配ってください。

6 国や自治体が屋外での運動を禁止した場合は、それに従ってください。