最終日は女子フルーレから始まり、1回戦で中学生が日本代表に勝つ快挙があった。京都・龍谷大平安中3年の飯村彩乃(15)が、国内ランキング2位の東莉央(22=日体大)と対戦。東京オリンピック(五輪)代表候補を相手に、素早い剣さばき、前への推進力などを生かして15-8で快勝した。

ここまで世代の日本一はもちろん、昨年のカデ・ユーロサーキット・カブリエ大会(フランス)では銅メダルに輝いた逸材。兄の一輝(龍谷大平安高2年)は前日の男子フルーレで2年連続3位に入った有望なきょうだいだ。コーチを務める父栄彦さんは、日本協会・太田雄貴会長の師匠として知られる。男子フルーレの08年北京五輪個人銀メダル、12年ロンドン五輪団体銀メダルの礎を作った名伯楽。そんなエリート一家で育った。

前日の兄の試合は「学校があって見られませんでした」という、あどけなさ。上京して迎えた初戦では「組み合わせが決まってから東莉央さんに勝つことだけ考えてきた」通りの結果をつかみ切った。新型コロナ禍の中、自宅のガレージを改造した練習場で父や兄と特訓。技の確認を重ね、父からは「いつも通りの彩乃でいけば、いけるよ。疲れてくると体が浮きぎみになるから(相手の懐に)潜れ! 潜れ! と言われてきました」。指導に懸命に応え「やってきたことが生きました」と感じた時には金星を手にしていた。

敗れた東も「1度も試合をしたことがなかった。練習も。フェンシングも初めて見ました」という彩乃に手を焼き「自分のやる技や得意なことをつぶされた感じ。誘われている感じがした」と、中学生とは思えない実力を素直に認めた。これを受けて彩乃は「自分の強みであるアタック、相手を攻める技はシニアにも通用するんだなと思いました」と自信を深め、ほほ笑んだ。

続く2回戦では、東と同じく日本代表の狩野愛巳(日清製粉グループ)に11-15で惜しくも敗れた。「1回戦で全力を出し尽くしてしまって、体力的にも…」と完全燃焼すると、笑顔になった。「たくさんの課題が見つかって良かったです」。

今後は、既に経験している世代別の日本代表からシニア代表に引き上げられ、ワールドカップ(W杯)やグランプリ、そして五輪に間違いなく向かうだろう15歳。新型コロナ対策が大きく注目された大会で、純粋に明るい話題として鮮烈な印象を残した。【木下淳】