関西5連覇を狙うA組(昨季奇数順位)の天理大が64-0で摂南大を圧倒し、開幕星を飾った。近い将来の日本代表入りが期待されるCTBシオサイア・フィフィタ(4年)が前半2分に先制トライ。8月に発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)を乗り越え、計10トライを挙げた。今季は4チームずつ2組に分け、順位決定戦を含め計4試合の短期決戦。この日のA組は関学大が28-14で近大に勝ち、8日に昨季偶数順位で構成するB組2試合が行われる。

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王者は力の入れどころを知っている。前半2分、敵陣に入った天理大はSO松永拓朗(4年)が防御ライン裏へキック。あうんの呼吸で飛び出したフィフィタがボールをつかむと、勢いのままインゴールへ走り込んだ。雨中の戦いで細かいミスが続出。だが、後半も開始5分で最初のトライを奪った。小松節夫監督(57)は「相手を無失点に抑えられたのは1つの成果」と主導権を手放さない戦いぶりを評価した。

8月中旬、部は混乱していた。全部員168人が生活する寮でクラスターが発生。初実戦を予定していた同月17日からの長野・菅平合宿は中止となり、チーム活動再開に約1カ月を要した。SNS上では感染拡大の原因が「鍋宴会らしい」と誤った情報が拡散され、フランカー松岡大和主将(4年)が「ストレスを感じる」とツイッターのアカウントを消すほどだった。

当初見込まれていた10月10日のリーグ開幕への不安から「ほんまに試合できるん?」という空気も流れた。オンラインで仲間同士をつなぎ、励ました。フィフィタも地元住民から寄せられた「強くなって戻ってきてください」という声に元気づけられた1人だった。

1月2日の全国大学選手権準決勝を戦った、先発13人が残る今季。関西で頭一つ抜けるのは相違ない。だが、コロナが原因の棄権も不戦敗扱いとなる。他大学同様に「見えない敵」とも戦わなければならない。小松監督は「最後までラグビーをやり続けることが最も大事」と言う。現在は天理市外への移動を禁止とし、細心の注意を払っている。

この日は後半22分に左膝を痛めたフィフィタら5人がベンチに下がり、そこから4トライとチームは発展途上だ。脳振とうの影響によりメンバーを外れた松岡に代わり、ゲーム主将を務めたのがフィフィタ。トンガで生まれ、日本航空石川から入学した男は言った。

「8月はチームにとって大きな壁。いろいろな方に支えられた。この場に立てることに感謝したいです」

初の大学日本一を目指す旅が始まった。【松本航】

◆今季の関西大学ラグビー 昨季順位で奇数(A組)偶数(B組)の4チームずつに分け、総当たり3試合で同組内の順位付け。最後は両組の同順位同士で順位決定戦を行い、上位3チームが全国大学選手権へ進む。コロナ感染などで棄権の場合は不戦敗。下部リーグとの入れ替え戦はなし。会場収容定員の50%以内で全試合有観客とし、チケットはチケットぴあ、ローソンチケット、イープラスで販売。当日券はなし。