19年ラグビーW杯日本大会で6トライを挙げ、南アフリカの優勝に貢献したWTBマカゾレ・マピンピ(30)が日本にやって来た。12日、大阪市内で行われたトップリーグ(TL)NTTドコモの入団会見に出席。世界的スターは誓った。

「いろいろな人たちに、希望を持たせたいと思う」

他を一瞬で置き去りにするスピード。その快足で世界一の輝く景色を見た。だが、道のりは険しかった。

「それが僕のレガシー。このストーリーを共有するのは苦しくも何ともない」

会見ではそう語ったが、これまで壮絶な人生を歩んできた。生を受けた1990年、母国では人種隔離政策「アパルトヘイト」が続いていた。東ケープ州の黒人居住区で生まれ、現地報道によると少年時代に母を交通事故で失った。きょうだいの1人は脳の病気、1人は電気ケーブルに感電して他界。ラグビー強豪校に通うこともなく、4年前まで資金難にあえぐクラブチームでプレーしていた。

南アフリカ代表デビューは2年前の6月。英語を本格的に覚えたのも、この頃からだった。日本戦の2トライなど、鮮烈な印象を刻み込んだ昨秋のW杯日本大会。代表ジャージーの背番号は家族の写真が刻まれていた。だが、マピンピだけは自分の写真だった。貧しい環境で家族全員を失い、写真さえ手元になかった。

NTTドコモとの契約は1年。10月下旬に合流した男の魅力を、下沖正博ゼネラルマネジャーは明かす。

「華やかなポジションなのに、チームマン。常に彼の大きな声が聞こえます」

マピンピは使命を持つ。

「僕だけでなく、まだまだ苦しんでいる人たちが現地にも、他の国にもいる」

TL開幕は来年1月16日の日野戦(大阪・花園ラグビー場)。その足で無限の可能性を示す。【松本航】

◆マカゾレ・マピンピ 1990年7月26日、南アフリカ生まれ。17年にキングズでスーパーラグビー(SR)デビュー。18年のウェールズ戦で代表初出場、初トライ。19年W杯で大会2位の6トライ。通算14キャップ。SRシャークスから加入。181センチ、90キロ。