国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(66)は17日、来夏に延期された東京五輪・パラリンピックのメイン会場で開閉会式が行われる国立競技場(新宿区)と晴海の選手村(中央区)をともに初視察した。国立では開会式の縮小化が必要か問われたが、大会に参加する選手の経験を最大限に尊重するため、縮小には消極的な姿勢を見せた。

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IOCが聖域として完全な形での実施を望んでいる開会式について、バッハ会長自ら意思表明した。経費面や新型コロナウイルスの感染防止策として開会式の縮小化が必要か問われ「開会式はアスリートにとって本当に意味がある。人生の非常に大きな経験になる。本当に良い経験だったと思ってもらえるようなことを必ず担保するセレモニーにしたい」と答え、縮小には消極的な考えを示した。

実際に式典が行われる国立のグラウンドに立ち、スタンドを見渡し「満員のお客さんが入ることを誰もが望んでいる」とフルスタジアムを熱望。「想像してほしい。マラソンゲートから選手たちが入場し、聖火が入ってくるところを。想像するだけで感動的だ」と熱を帯び話した。一方で、現実的な来夏の観客数については「9カ月後の状況に合った妥当な数となるだろう」と伏線を忘れなかった。

開会式を巡っては組織委側が簡素化の一環で、時間短縮をIOCに求めたが、既に販売済みの放送権を理由に断られた経緯がある。

満員の競技場を望む一方で、海外からの訪日観客へワクチン接種を求めるか問われ「ノー」と義務化は否定。ただし、「皆さんに受けてもらえたら良いとは思う」と推奨した。

前日、選手や関係者にワクチン接種を求め、その費用をIOCが負担すると表明。この日はその枠組みを「選手村に泊まる関係者」と明確化した。

初訪問となった国立を「落ち着いて日本的ですばらしい」と評価。また、来年3月25日から始まる聖火リレーに合わせ再び来日したい考えを示した。「みんなが楽しめる大きな大会が開かれると確信している」と、あらためて開催への自信を強調したバッハ氏は、18日に離日する。【三須一紀】