第100回全国高校ラグビー大会は、27日に東大阪市の花園ラグビー場で開幕する。コロナ禍の影響で無観客開催となり、家族も会場では観戦ができない。日刊スポーツでは「思いよ届け! 特別な冬」と題し、西日本の注目校を紹介。最終回は、記念大会で大工大高時代を含め6度目の日本一を目指す常翔学園(大阪第3)です。

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常翔学園のSO仲間航太(2年)は、母久美子さんが大好きだ。「ずっと、何でもしてくれて。おもしろいし。めっちゃきれいですよ。名前に“美”って入ってるでしょ?」。少年期にありがちな照れがない。隠し事も一切ない。「小さい頃から、晩ご飯で学校であったこと、友達のこと、全部しゃべってました」。中学時代には、ガールフレンドを家に連れて行くとすぐ仲良くなり、2人で試合を見にきてくれた。

保険会社に勤めながら、女手一つで兄優斗(24)と自分の兄弟2人を育ててくれた。大阪市鶴見区の自宅は、鶴見緑地球技場の隣にある。子どもの頃、音や声でラグビーの試合をしているとわかると一緒に見に行った。球技場横でパスの相手もしてくれた。必然、母もラグビー通になる。「航太、今日はよう声出てたで」。しょっちゅう観に来てくれる試合での出来を“採点”もしてくれる。

料理の腕も抜群だ。「お母さんのごはんは世界一おいしい。何でも作ってくれる。好きな料理と聞かれたら困るんです」。最近印象的だったメニューは、イタリア料理のアクアパッツァ。「鯛(たい)アサリとかが入っていて、オリーブオイル使って。具を食べた後、パスタ入れてくれて。それがまたおいしい」。母親賛歌が止まらない。

大好きな母に今回は生でプレーは見せられないが、贈りたいものはある。「優勝。全国大会の金メダルを見せたことないんで」。1年生SOで出場した昨年度大会は準決勝敗退。銅メダルを手渡した。

28日の初戦は、花園常連の日川(山梨)と対戦。今度こそ。母のためにも頂点をとる。【加藤裕一】

 

◆常翔学園 1921年(大10)に関西工業専修学校として創立。ラグビー部創部は37年。変遷を経て50年から「大工大高」に、08年4月から現校名。男女共学の普通科高校。ラグビー部は37年創部で全国優勝5回(77、81、88、95、12年度)。主なOBに河瀬泰治、元木由記雄(現京産大GM)ら。部員数93人。