新型コロナウイルスの影響で1年間延期された東京五輪・パラリンピックが今夏、本当に開幕するのかという不安をアスリートは一様に抱えている。3大会連続の五輪出場を決めている卓球女子の石川佳純(27=全農)が新春インタビューに応じ、勇気を出して開催実現を訴えた。団体戦の目標は日本卓球史上初となる「金メダル」と断言した。【取材・構成=三須一紀】

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-コロナで五輪が延期した2020年はどのような年だったか

「14歳で国際大会に出るようになって、日本にこれだけ長くいられたのは初めてだった。自分を見つめ直す時間ができた。良い意味で自分がやりたいようにやろうと、楽しもうと思えるようになった」

-五輪開催への世論が割れている

「選手としては開催してほしい。五輪の舞台で戦いたい。全てを懸けてきたので『開催しなかったらしょうがない』とは声を大にしては言えない」

-昨年11月、日本で行われた体操の国際大会で五輪金メダリストの内村航平が「できないじゃなく、どうやったらできるかを考えて」と発言し、大きな話題を呼んだ。意思表明が控えめだった日本のアスリートとしては強いメッセージだった

「ニュースで見た。内村さんは実績もあって発言するのはすごく勇気がいると思う。それでも言ってくれて、見ていた私は選手として力をもらったし『そうだよね、言っていいよね』と思えた。あの勇気、すばらしいと思った」

-石川選手も自分の言葉で発信しようと思ったか

「はい。11月、国際大会で中国に行った際、確かに隔離期間も厳しかったけど、実際に大会が開催されて自信がついた。8カ月ぶりの国際大会が本当に楽しかった。やっぱり東京五輪をやりたい、出たいという気持ちになった」

-組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)委員の中には最悪の場合、無観客でも開催すべきとの声がある

「もちろん観客がいる中でやるのが夢だけど、無観客でも五輪は五輪。それでも全然、やってほしい」

-28歳で迎える東京五輪。ずばり24年パリ五輪を目指すか

「正直分からない。五輪を目指すとなると選考レースを勝ちきる覚悟が必要。その気持ちが持てるかどうか」

-年齢の問題もある

「そうですね。やっぱり今までとは違う」

-考えたくはないが万が一、コロナで東京五輪が中止となった場合、パリを目指さなければそこで石川選手の五輪は終わる

「五輪は過去2回出て、舞台を踏んでいないわけではない。東京がなかったら、次はパリという考え方にはならない」

-選手として第一線を退いた後の人生プランは。卓球協会の本流で監督を目指すなどの考えはあるか

「それだと今まで私がいた世界と同じ。そうではない形で子どもに教えるなどして卓球を世の中にもっと広めたい。東京五輪が終わったら何年かかってもいいので47都道府県で卓球教室をやりたい」

-昨年11月、王者中国勢と戦ってみた感想は

「さらに強くなった」

-初めて最年長で迎える五輪で自身の役割は

「過去2回の五輪で経験してきたことを全部生かして良いチームにしたい。金メダルを獲得するには中国に勝たないといけない」

-団体戦で共に戦う伊藤美誠選手、平野美宇選手と五輪をどう戦うかなど話すことはあるか

「まだないが五輪に出場する3人は本当に頑張っている。1番良い色のメダルが欲しいという気持ちは話さなくても練習を見ていれば分かる」

-今月11日に開幕する全日本選手権で五輪イヤーが幕を開ける

「目標は(3連覇して以来5年ぶりの)優勝。その後の国際大会も開催されれば積極的に出たい。それが東京五輪につながっていく」

◆石川佳純(いしかわ・かすみ)1993年(平5)2月23日生まれ、山口市出身。両親ともに卓球選手で、平川小1年で競技を開始。07年全日本選手権で13歳11カ月の史上最年少ベスト4。11年には高校生として22大会ぶり全日本初優勝。12年ロンドン五輪シングルス4位、団体銀メダル。16年リオ五輪は団体銅。14、16、18年世界選手権団体銀。158センチ。家族は両親と妹。血液型O。