女子テニスの世界3位、大坂なおみ(23=日清食品)が4カ月半ぶりにコートに戻ってきた。開幕が2月8日に延期となった今季4大大会初戦の全豪オープン(メルボルン)に向けて、29日に非公式大会がアデレードで行われ、4大大会23度の優勝を誇るセリーナ・ウィリアムズ(39)と対戦。久々の有観客の中、笑顔を見せながらプレーし、2-6、6-2、7-10で敗れた。大坂は31日からメルボルンで始まる全豪前哨戦で、今季の公式戦がスタートする。

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非公式戦とはいえ、大坂にとって20年9月13日の全米決勝以来の実戦だった。個人戦では20年1月の全豪以来となる有観客。コートに入った時には、思わずキョロキョロと観客席を見回した。アデレードが州都の南オーストラリア州の新型コロナ感染死者数はわずか4人(24日時点)。マスクがほぼ見当たらない観客から、入場時にセリーナより大きい声援を浴びた。「こんなに大勢の人と空間を共有できたのはいつ以来かな。本当に楽しかった」とファンの声に心が震えた。

米ロサンゼルスから15日にアデレード入り。到着後は、規則通り2週間の強制隔離に入った。到着直後の検査で陰性であれば、2日目からは1日2時間の練習を含む5時間の外出が許可された。しかし一方で、メルボルンに入国した大半の選手ら関係者70人以上は、部屋から廊下に出ることさえ許されない状況に陥っていた。同乗した飛行機に陽性者が出たことで、濃厚接触者となったからだ。

大坂が練習の様子をSNSに掲載したことで、そのメルボルン組から待遇差への不満が爆発した。オーストラリア協会はすぐさま大坂に投稿の削除を要求。完全隔離の選手らを考慮し、全豪前哨戦の開始日を1日遅らせることを決定した。

何かと大坂の一挙手一投足に世界の注目が集まる。昨年、人種差別への抗議行動などで、一気に世界の象徴的な存在となった。多くのスポンサー企業を抱えるのと同時に、アスリート支援も忘れない。28日には、米女子プロサッカーリーグの強豪ノースカロライナ・カレッジの共同オーナーとなることが発表された。

新型コロナウイルスの感染拡大で、外国人は20年3月からオーストラリアには原則、入国できない。全豪に向けた選手らの入国は特例だ。そんなオーストラリアの配慮とファンがいるありがたみに感謝し、大坂は21年をスタートさせた。