94年リレハンメル五輪ノルディックスキー複合団体金メダリスト阿部雅司氏(55)が11日、北海道eスポーツ協会新会長として競技普及の構想を語った。札幌市内でこの日行われた「北海道eスポーツフェスティバル2021」のオープニングイベントに出席。冒頭で「eスポーツは医療や教育の分野も含めさまざまな可能性を秘めている。1人でも多くの人に知ってもらうチャンスだ」と話した。

16年に嘱託職員(現在は特別参与)になった名寄市でコンピューターゲームで競うeスポーツの可能性を知った。同市が実施した体験会で高齢者が人気ゲーム「太鼓の達人」を楽しむ姿を目にし、生涯スポーツとしてのeスポーツに関心を持った。アドバイザーを務める札幌市スポーツ協会で主催イベントにeスポーツを取り入れたいと、昨年12月に北海道eスポーツ協会に問い合わせたところ、同協会から「宣伝塔なってもらえないか」と“逆オファー”。熱心な要請に阿部氏は「僕が引き受けることで今までeスポーツに興味なかった人が興味を持ってもらえるなら」と快諾した。

現役時代のW杯遠征時に人気ゲームシリーズ「スーパーマリオ」をプレーするなど親しみはあったが、会長就任に際して書店でeスポーツ関連書籍を複数購入して勉強中。自らを「発信塔」と位置付け、先月26日に会長就任したばかりだが、精力的に活動している。今月末には名寄市の加藤剛士市長(50)とともに同市内の名寄産高を訪問し部活動設置の働き掛けをする予定。さらに今夏には大倉山ジャンプ競技場にあり、自身が名誉館長を務める札幌オリンピックミュージアムでのイベント実施構想も練っているという。

18年アジア大会(インドネシア・ジャカルタ)で公開競技として実施され、北海道内でも札幌新陽高などが部活動として実施して認知度は上がってきている。北海道eスポーツ協会の活動では普及活動や指導者の育成を通して、競技特性によって懸念されるゲーム依存症などの問題もガイドライン策定などを通して解消していく。阿部氏は「障がいのある人や男性、女性、年齢問わずにできるスポーツ。将来的には五輪でそういった枠組みを超えてできるようになれば」と期待を口にした。【浅水友輝】