新潟医療福祉大水泳部が11日、ダイエープロビスフェニックスプール(長岡市)での合宿を公開。競泳100メートルバタフライの水沼尚輝(24=同大職員)が東京オリンピック(五輪)の代表選考会を兼ねる日本選手権(4月3~10日=東京アクアティクスセンター)に向けてスパートをかけている。水沼は7日の中村真衣カップ(長岡市)で自己ベストの51秒19をマーク。好調を維持して本番に挑む。

水沼の大きなストロークが水を捉えた。アップ中の泳ぎにもかかわらず、豪快に水しぶきが上がった。ひとかき2メートルのストロークが持ち味で、180センチの全身が水に乗る。濃紺色のスイミングキャップが水面をめくり上げながら前へと進む。サイズ30センチの足が生み出すドルフィンキックも、水中での大きな推進力。「五輪にフォーカスしているから、日本選手権は通過点です」。五輪代表の選考は日本選手権が一発勝負。五輪派遣標準記録(51秒70)を切っての2位以内が代表の条件であるが、さらに上を見ていた。

水沼のモチベーションのもとは、16年リオ五輪100メートルバタフライ決勝の動画。1日に1回は見て、心を奮い立たせている。シンガポールのジョセフ・スクーリング(25)が同国に史上初の金メダルをもたらしたレースだ。「彼を僕自身に置き換えてイメージしている。100メートルバタフライの日本人メダリストはいないから、日本人初のメダルを獲得したい」。19年世界選手権(韓国)代表だけに「世界」の雰囲気は分かっている。

昨夏は左肩を故障した。オーバーワークが原因だった。コロナ禍で本格的に水中トレーニングを再開したのは6月に入ってから。下山好充監督(49)は「半年でやるべきところを2、3カ月でやった。詰め込みすぎた」と愛弟子の故障を振り返る。ところが、故障が癒えると好調の波に乗った。2月のジャパンオープン(東京)は2位ながら51秒34。7日の中村真衣カップでは自己記録を0秒07縮める51秒19をマークした。09年に河本耕平さん(41)が作った日本記録51秒00に0秒19差に迫った。「4月の日本選手権に向けて、ソワソワしないメンタルを身につけたい」。水沼は本番に向けて、集中を研ぎ澄ます。【涌井幹雄】

◆水沼尚輝(みずぬま・なおき)1996年(平8)12月13日、栃木県真岡市生まれ。作新学院-新潟医療福祉大。現同大職員。100メートルバタフライで18年のインカレ優勝、19年日本選手権V。同年の世界選手権出場。180センチ、83キロ。血液型B。