NBAのラプターズでプレーする渡辺雄太(26)が19日、チームと本契約を結んだ。

両親はいずれも国内トップリーグでプレーした元選手。実業団の熊谷組の一員として日本リーグ優勝経験を持つ父の英幸さん(62)は20日、日刊スポーツの取材に、「何があってもあきらめない姿勢と、純粋にバスケが好きなことがこうしてつながったと思う」と感慨に浸った。

いまから約20年前、衛星放送のNBA中継を見ていた小学1年の雄太少年は、「将来NBA選手になる」と宣言した。ブラウン管の向こうで活躍していたのはコービー・ブライアント(レーカーズ)。英幸さんは、「途方もないことを口にするもんだ」と苦笑いを浮かべたが、ほどなくして父子による早朝練習が始まった。5時半に起きて6時に練習開始。十分な睡眠時間を確保するには9時に就寝する必要があり、それまでにきっちり宿題を終えていなければならない。他の子のようにゲーム機で遊ぶ時間はなかったが、雄太少年はバスケに没頭した。

父と子の厳しい練習は中学を卒業するまで続いた。高校では寮生活。3年春、米国挑戦の意思を告げられた英幸さんは、「そりゃ、びっくりした」。それでも真っすぐな視線で話す息子の姿に、夢の後押しを決断。親子で交わした約束は、「死ぬ気で勉強すること」だった。その後、異国の地で文武両立を果たした青年は、夢だったNBAの舞台でアピールを続け、ついに本契約をつかみ取った。【奥岡幹浩】