東京オリンピック(五輪)で日本悲願の金メダルを獲得した団体のアンカー加納虹輝(23=JAL)が初の決勝進出を果たした。

第2シードとして2回戦から登場。3試合を順当に勝ち上がり、準決勝で昨年3位の古俣聖(23=本間組)に15-12で競り勝った。「全日本では決勝に残ったこともなかったのでホッとしています」。今大会は前日に男子フルーレの松山恭助、敷根崇裕、西藤俊哉の東京五輪代表勢が敗退。この日も、同じ金メダリストで世界ランキング1位の山田優(27=自衛隊)が準々決勝で敗退するなど波乱が重なっているが、きっちり勝ち抜け「人によると思うんですが、自分は金メダリストの重圧とかはあまり感じませんね」と泰然自若で初の全日本タイトルに王手をかけた。

準決勝では、相手にリードを許していた序盤に右手の中指と薬指、右ふくらはぎがつり、左ふくらはぎもつる寸前となってピスト(競技コート)上で治療を受けた。「情けない試合になってしまったんですけど、気持ちだけで」。相手の古俣も24年パリ五輪の代表候補だが、その実力者を相手に不利な状況から逆転。「なかなか攻めることが難しかったんですけど、僕が動けないのをいいことに、古俣選手が攻めてきてくれたので、それを利用してカウンターで点を取れました」と笑顔で振り返った。

五輪後は金メダル効果でテレビにラジオに引っ張りだこ。地元の山口・岩国市では「街で声をかけられるようになった」と喜ぶ。表敬訪問等でも多忙で、五輪後の練習は計7日間だけだったが、快挙の余韻をしっかりつなぐ決勝進出を果たした。

相手は、代表チームの先輩で公私ともに仲のいいフェンサー兼YouTuberの「さときんぐ」こと村上仁紀(30=あおぞら病院)に決まった。「手の内を知っている代表同士が争う全日本。そのやりとりに自分はこれまで勝てませんでしたが、初タイトルを絶対に取りたいし、必ず取ります。決勝まで、さときんぐさんの弱点をしっかり探りたい」。金メダリストだ、日本一は譲れない。【木下淳】