米メジャーリーグ・ラグビー(MLR)のLAギルティニス(ロサンゼルス)は17日(日本時間18日)、公式サイトでオーストラリア代表121キャップを誇るBKアダム・アシュリークーパー(37)がアシスタント・コーチに転身していることを発表した。W杯4大会でトライを挙げた世界的スターは、選手として第一線から退くことになる。

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米国からの一報を受け、神戸製鋼に加入したばかりの4年前を思い返した。初めて取材したのは17-18シーズンのトップリーグ開幕戦(ヤンマースタジアム長居)。17年8月18日、NTTドコモとの一戦に途中出場したアシュリークーパーを、数人の記者と取材エリアで待った。当時33歳だったが代表116キャップ。思い浮かぶのは力強い突破や、美しいダイビングトライで、人柄に関しては勝手に想像するしかなかった。

忘れられないのは、取材エリアに姿を見せた時の屈託のない笑顔。整ったあごひげをさすり、一瞬でその場の緊張感が解けた。試合の感想に始まり、1カ月ほど前に結婚した夫人と来日したことも明かした。「もしよろしければ、奥様の名前も…」と遠慮気味に質問した我々に対し、名前だけでなく、同い年という情報まで丁寧に教えてくれた。

来日2季目に入る直前、1対1で話を聞く機会があった。同僚の日本人選手に普段伝えていることや、当時のチームの伸びしろを丁寧に教えてくれた。その上で、こうも言っていた。

「神戸製鋼という歴史の深いチームでプレーできていることを光栄に思います。これだけのいい人たちと一緒に、フィールドでプレーさせてもらえるのは本当にボーナス。自分はもう年寄りかもしれないけれどね(笑い)。まだまだエキサイティングな気持ちです」

そのシーズンは15季ぶりのトップリーグ優勝に貢献した。CTB、WTB、FB…。どのポジションでも持ち味をチームに還元した。元ニュージーランド代表SOダン・カーターらと、世界レベルの意識を落とし込んだ。ファンに対しては、常にあの笑顔で接した。

日本でのプレーは2シーズンだった。在籍中にオーストラリア代表復帰を果たし、19年W杯日本大会で同国を背負って帰ってきた。

「自分はもう年寄りかもしれないけれどね」-。

そんなジョークとプレーのギャップに、自然と引き込まれていた。【松本航】