1日付で柔道男子代表監督に就任した鈴木桂治氏(41)が2日までに自身のブログを更新し、前監督の井上康生氏(43)への思いを告白した。

「井上康生」と題して、現在の心境を赤裸々につづった。金メダル0個に終わった12年ロンドン五輪で井上氏は重量級コーチを務め、同11月に監督に就任。16年リオデジャネイロ五輪で全7階級メダル、東京五輪で史上最多の金メダル5個の快挙を成し遂げた。

鈴木氏は井上体制でのトレーニングや食事などさまざまな「改革」があったとし、五輪2大会で結果も出て称賛の嵐を目の当たりにしたという。9年間担当した重量級コーチとして、学んだことを挙げ「井上康生監督もコーチ時代はもがいて失敗という壁にぶち当たっていた。そして、二度と同じ過ちは繰り返さないという切り替え。今の選手に必要なことを考えて行動し、結果を出すという能力。本当に学びました」とつづった。

現役時代は長く100キロ級でライバル関係にあった2人。鈴木氏は当時を思い返し「自分は現役時代からたくさんの人に応援され、愛される井上康生に嫉妬していたのかもしれない。勝つことでしか納得できない自分とは違った魅力が、井上康生にはあったんだろう」と分析した。

「当時は井上康生に敵視がすごかった!(笑) チクショー!って。全てを味方につける井上康生。その味方になってる人も倒したいと思っていた鈴木桂治。なんか複雑だし、今でもなんかモヤモヤしてるし」

しかし、そのライバルがいたからこそ、今の自分がいると感謝する。「間違いなく井上康生がいなかったら、自分はここまで勝てていない。逆に、井上康生がいなくなってから自分も弱くなった。言い訳だけど、本心。やはり、井上康生ほど、自分の闘争心やモチベーションを上げてくれる人はいない。サッカー界で言えば、キングカズ!! そんな井上康生を超えるって面白いやん!って。結局、何をもって越えるなのかは答えが出ないまま」。

代表コーチとなっても、その気持ちは現役時代と変わらなかったと強調。「同じ気持ちで嫉妬して負けたくないと思って、どうしたら周りを納得させることができるのかということを考えた9年間でした」。

1日付で新体制が始まり、鈴木氏が監督、井上氏が全日本柔道連盟の強化副委員長に就任した。鈴木氏は「やはり壁は高く厚い。越えられる気配がない(笑)。でも、それでいいと思う。もし、越えたと感じたらモチベーションはガタ落ちしてしまう。常に俺の視界にギリギリに入ってもらえれば、そこに追いつくように猛ダッシュします」と気持ちを新たにした。

最後はコーチ時代に呼んでいた「井上康生監督」、プラベートで呼んでいた「康生先輩」と記し、「本当にありがとうございました。そして、これからも俺のモチベーションでいてください。勝手にモチベーションにします」と感謝の言葉を伝えた。