オーストラリア入国をめぐり、男子テニスの世界ランキング1位ノバク・ジョコビッチ(34=セルビア)の査証(ビザ)が14日、再び取り消された。同国のアレックス・ホーク移民相は「健康と秩序に基づき、公共の利益にかなう」という声明を出し、移民法を適用し、ビザを取り消した。数時間のうちに、ジョコビッチは国外追放になる可能性があったため、弁護士が再び裁判所に異議を申し立てた。17日に開幕する全豪オープンへの出場は非常に厳しくなった。

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週末に入る金曜日の夕方。仕事時間としてはギリギリの現地時間午後6時ごろ、ホーク移民相が大きな決断を下した。「ジョコビッチ氏のビザを取り消した」。オーストラリア政府は医学的に正当な理由なく、新型コロナウイルスワクチンの接種免除を要求しているとみている。熟考して導き出した政府の確固たる意思だった。

この決定に従えば、全豪出場どころか、ジョコビッチは数時間以内に、国外に追放されることになる。それを止めるため、ジョコビッチの弁護士は、6日に続き裁判所に、2度目の異議申し立てとなる、決定差し止め命令を提出した。

裁判所の判断はもちろん、その時期はいつになるのか。4大大会男子シングルス単独最多の21度目の優勝がかかる全豪は、17日に開幕する。1回戦は、通常なら17、18日の2日間にわたって行われる。しかし、例外として19日水曜日の早い時間帯に組み込むことも可能。そこが実質的な全豪出場のデッドラインになりそうだ。

昨年の同時期には、全豪出場のため入国した選手の誰もが、1日約4時間の外出を除いて、2週間の隔離を強いられた。濃厚接触者となった錦織圭は、2週間、部屋から1歩も出られなかった。当時、ビクトリア州の新型コロナ感染者はほとんどおらず、水際対策は完璧だった。

しかし、今年、モリソン政権は新型コロナとの共存にかじを切った。鎖国を続けるわけにはいかなかったようだ。その結果、この2週間で3万人以上の感染者が出た。過去の長い都市封鎖(ロックダウン)や、感染に耐える国民の感情にも寄り添った移民相の決断だった。

前日の13日、全豪オープンは男女シングルスの本戦組み合わせ抽選を行い、ジョコビッチは第1シードとして、ドローに名前を連ねた。大会公式HP、そして報道陣専用サイトのドローには、まだジョコビッチの名前が最上段に輝いている。

 

ジョコと全豪経緯

◆出場発表 全豪オープンの主催者は1月4日、4連覇と4大大会歴代単独最多となる21勝目が懸かるジョコビッチの出場を発表。全豪は、出場全選手にワクチン接種を義務づけたが、医学的見地から、接種免除を許可する可能性も明かしており、ジョコビッチが免除許可を承認された。

◆入国拒否 メルボルンの空港に、1月5日深夜に到着したが、入国を拒否された。ワクチン接種を免除する証明が不足していると、入国ビザは取り消しに。同国のモリソン首相も決定を支持。

◆異議申し立て ジョコビッチの弁護団は6日、国外への強制送還を阻止するため裁判所に異議を申し立てた。本人は空港で足止めをくらっていたが6日午前、メルボルンの隔離ホテルに移送された。

◆入国認められる オーストラリアの裁判所は10日、ジョコビッチの入国を認める判断を示し、政府に対して選手を収容先から即時に解放するよう命じた。

◆第1シードも 組み合わせ抽選が13日あり、ジョコビッチは第1シードとして、1回戦で78位ケツマノビッチ(セルビア)との対戦決定も、政府はビザ取り消し問題の結論出さず。