26年ミラノ・コルティナダンペッツォ・オリンピック(五輪)の新競技、山岳スキーで北海道育ちのスキーヤーの挑戦が始まっている。女子の滝沢空良(そら、24=遠軽町出身)は4年後の代表候補だ。2月の日本選手権で2冠を達成。元ノルディックスキー距離の選手は「どうしてもオリンピックに出たい」と4年後を目指している。

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滝沢は閉幕したばかりの北京五輪を見て、気持ちを高めた。4年後のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪では、山岳スキーの採用が決まっている。日本選手団の活躍に「普段見ないような競技も見て応援した。次は私もあの中で」とイメージを膨らませる。

山岳スキー歴は4シーズン目。旭川大高時代まで距離の選手だった。3年時に国体で優勝、全国高校総体では5位入賞の実力者だった。だが卒業後はトレイルランニングに打ち込み、さらに山岳などを駆け上がるスカイランニングに魅力を感じて転向。長野・小谷村の旅館で働きながら競技をしていて出会ったのが山岳スキーだった。「クロカンも好きだったけど、山頂に行った時の爽快感に、とりこに」。距離でも登りの方が得意だった。感覚を呼び起こし、めきめきと成長している。

小学生の時に夢見た舞台に立てるチャンスがめぐってきた。距離の練習に励みながら、作文には「五輪に出たい」と書いていた。競技は変わるが「どうしても出たい」と練習にも熱が入る。2月26、27日に富山・黒部市で行われた日本選手権ではスプリント、インディビジュアル(個人)の2種目ともに優勝した。日本山岳・スポーツクライミング協会の笹生博夫山岳スキー委員会委員長(72)も滝沢について「将来有望な選手」と期待する。

登る、滑る、滑走の技術に心肺機能と、スキーのあらゆる能力が求められる競技。現在は札幌市内のスポーツ整形外科クリニックでリハビリ助手として働きながら練習する日々。「北京五輪が終わり、4年を切った。選考はもっと早い段階。もっと力をつけたい」。五輪という大きな山に向かってひたすら前進しようとしている。【保坂果那】

◆滝沢空良(たきざわ・そら)1997年(平9)9月10日、大阪・豊中市生まれ。3歳で京都から白滝村(現遠軽町)に移住し、スキーを始めた。遠軽白滝中3年で全国中学距離フリー、リレーで3位。旭川大高3年で国体クラシカル優勝。全国高校総体はフリーで5位、リレー2位。スカイランニングでは17年ユース世界選手権2位。18年末から山岳スキーを始める。家族は両親と姉。161センチ、53キロ。

<山岳スキー>

◆呼び名 スキーと登山を組み合わせた山岳競技で「スキーマウンテニアリング」を略して「スキーモ」。

◆歴史 アルプス山脈の国境警備に当たる軍隊の雪上訓練から発展。1990年代に本格的な競技化が進みイタリアやフランスなどを中心に年間に100あまりの大会が開かれる。日本選手権は05年に長野県で初開催。日本国内の競技人口は約200人という。

◆五輪採用への道 21年7月の国際オリンピック委員会(IOC)総会で26年冬季五輪での採用が決定。

◆競技 スキー板の裏にシール(スキン)と呼ばれる専用の滑り止めを装着して登ったり、担いで駆け抜けることもある。斜面は滑走する。「魅力的」という意味で「セクシーなスポーツ」と言われる。装備が決められており、ビーコン(発信機)やスノーショベル、ロープ、サバイバルシートなど。

◆種目 五輪では「スプリント」と「インディビジュアル(個人)」の各男女、混合リレーの計5種目を実施予定。

◆スプリント 短距離コースでアップダウンが少なく、競技時間4分程度。スピードを競い、レースを1日に複数回重ねる。

◆インディビジュアル 標高差合計1500メートル以上でアップダウンが最低3回設定されている10キロ以上の長距離コース。トップの選手で1時間半ほどの競技時間を想定。