ノルディックスキー複合女子の中村安寿(22=札幌市出身)が東海大北海道を卒業し、社会人としてスタートを切った。4月からショウワ(本社・尼崎市)入りした。兄は北京オリンピック(五輪)代表のジャンプ中村直幹(25=フライングラボラトリー)。26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪での採用を目指す複合女子の日本のエースは、兄妹での五輪出場を狙い4年後を見据えている。

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学生から社会人に立場も変わり、中村が表情を引き締める。4月から生まれ育った札幌市を離れ、長野・白馬村を練習拠点に構える。1日に入社式を終えた。競技に集中できる環境が整うことに喜びを感じ、気合が入る。「これからは社会人として、今までとは違う緊張感がある」と背筋を伸ばす。

20年12月からスポンサーとして支援を受けていた、洗浄器事業などの企業ショウワに正社員として迎えられた。94年リレハンメル五輪複合団体金メダリスト阿部雅司氏の紹介がきっかけだった。藤村俊秀社長(51)は「若いけどガッツもある。これからも応援したい」と期待を寄せる。

複合女子のワールドカップ(W杯)がスタートして2シーズン目、頂点に立った。3月12日ショーナッハ大会(ドイツ)で初優勝。昨年10月に卵巣に腫瘍が見つかり、腫瘍摘出手術を受けた。術後は傷の痛みで歩くこともできなかった。退院して約2週間後、ランニングも再開できない状態で11月に海外遠征に出発した。そんなスタートだっただけに「今季優勝できて良かった」と安堵(あんど)した。

次の五輪での採用候補種目だけに、北京五輪も見え方が違った。特に兄直幹の出場に刺激を受けた。競技後、誓うように「次26年ね!」とメッセージを送った。兄からは「絶対に行こう」と返事が届いた。「五輪の舞台に立つ姿を見て、自分も絶対に26年出たいと思った」と気持ちを新たにする。

22-23年シーズンのビッグゲームは女子で2度目の開催となる世界選手権(スロベニア)。前回の20年オーベルストドルフ大会(ドイツ)は4位だった。「いつもはシーズンで何個か目標を立てるけど、世界選手権で金メダルって目標だけ」と掲げる。なぜなら「直近の目標は五輪で金メダル」だから。【保坂果那】

◆中村安寿(なかむら・あんじゅ)2000年(平12)1月23日、札幌市生まれ。5歳から札幌クロスカントリースキー少年団で距離を始める。札幌大倉山小、札幌宮の森中を経て東海大札幌高1年から複合に転向。東海大北海道1年で海外デビュー。19年世界ジュニア選手権3位、20年同大会9位。21年世界選手権4位。W杯は出場9戦で表彰台3度、うち優勝1度。家族は両親と兄、弟。

◆複合女子 26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪での採用を目指しており、22年夏のIOC総会で決まる見通し。20-21年からW杯と世界選手権での実施がスタートした。日本は中村のほかに双子の葛西優奈、春香(18=早大、東海大札幌高出)も有力選手。妹春香は21-22年W杯2位2度の実力がある。