ラグビー「リーグワン」のコベルコ神戸スティーラーズの元日本代表プロップ山下裕史(36)が、急逝した恩人への思いを語った。

チームでヘッドFWコーチを務めるスティーブ・カンバーランドさんが17日に他界。57歳だった。

21日は神戸・灘浜グラウンドで、23日東京ベイ(クボタ)戦(江戸川区陸上競技場)に向け練習を公開。取材対応した山下は当初、カンバーランドさんに関するコメントは「NGで」としていた。

ただ、自然と言葉が出てきた。

「カンビーのために。ただ、それだけです。週末(の試合)にいいスクラムを組むだけ。僕がこのチームに在籍している限りは、安心させてあげられるように。僕が引退したら(カンバーランドさんの)思いは若い子らが引き継ぐ。カンビーが残したものは、レガシー(遺産)として生き続ける」

16日に熊谷で行われた埼玉(パナソニック)戦に同行しており、自宅で亡くなっているのが見つかったのは17日のことだった。選手は翌18日のミーティングで伝えられたという。

「土曜まで一緒だったのでね」

そう話すと、思い出があふれてくる。

「僕と同じ2008年に一緒に(神戸に)入ってきたんです。『プロップはチームで1番元気じゃないといけない』って言うてましたね。昔ながらの人でスクラムが好きなおっちゃんでした。3番は真っすぐ。1、2番はそれに付いていく。そんな組み方でした。アカンかった時は『何してんねん』って、しょっちゅう怒られた。『運動量がない』と、ボロクソに言われたこともありました。僕は中学の時に父親を亡くしているんでね。お父さんのような存在でした」

酒とゴルフとハーレー(バイク)が好きな人だった。

「新人が入ってくるとね。『プロップは誰や?』って呼ぶんですわ。プロップは酒が飲めなアカンってね。よく、新人のフロントローとビールを一気飲みしてました。先に顔が赤くなるんですけどね」

今季、神戸は開幕から低迷を続けた。

カンバーランドさんにとって、最後の試合となった16日埼玉戦はプレーオフ(PO、4位以内)出場をかけたラストチャンスでもあった。その試合に31-37で敗戦。POは数字上の可能性を残すだけとなった。

「シーズン最初はいいスクラムが組めないと悩んでいました。いいスクラムが組めれば、何も言わない人やった」

チームは23日東京ベイ戦に喪章を着けて戦う。

旅立った恩人へ、勝利を届けるために。【益子浩一】