車いすテニス史上、初めて4大大会で日本男子同士の対決が実現した。今大会が4大大会デビューとなった驚異の16歳、世界9位の小田凱人(16=東海理化)が、16年リオデジャネイロ・パラリンピック・シングルス金メダルで、同4位のゴードン・リード(英国)に6-1、6-4のストレートで勝ち4強入り。東京パラリンピック金メダルで、世界2位の国枝慎吾(38=ユニクロ)も勝ち、準決勝で激突することになった。

小田は、1回戦の緊張を振り払うかのように、金メダリストを得意のパワーで圧倒した。「完成度が高かった」というほどの出来で、第1セットは1ゲームしか与えず。第2セットの接戦も振り切った。

小田は、9歳の時に、左股関節の骨肉腫で車いす生活になった。主治医にパラスポーツをいくつか紹介され、動画サイトで見た国枝慎吾の姿が「本当にかっこよかった。いつになってもかっこいいですけど(笑い)」。そして、国枝の背中を追いかけながら、世界を目指した。

国枝は、昨年の東京パラリンピック後、現役続行のモチベーションに苦しんだ。今年1月の全豪では「毎日、毎日、止めようと考えていた」。しかし、全豪決勝のプレー内容に、自分は、まだできると感じた。そこから、サーブ、フォア、バックと改善し、それを戦うモチベーションとしてきた。

準決勝で小田と対戦する国枝は、「(プロ転向で)彼は、この世界で生きていくと決意した。そして、最近、うわ、来ているなと感じる」と、若武者の勢いを実感している。今年1月の全豪前哨戦で初めて対戦し、ストレート勝ちだが、ともにタイブレークと競った。

国枝が、初めて世界1位になったのが06年10月。それ以来、築き上げた国枝王国が崩れるときが来るのか。それとも、王者がZ世代の旗手に待ったをかけるのか。日本の車いすテニスの歴史がつくられる瞬間だ。【吉松忠弘】

◆全仏オープンテニスは、5月22日から6月5日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドとテニスワールドでライブ配信される。