高校日本一を決める高校総体(7月23日開幕、徳島ほか)出場をかけた道予選が1日、全道各地で開幕した。11日に札幌で開幕する少林寺拳法道予選には、今春の高校選抜女子団体演武で優勝し、3年ぶりの春夏2冠を狙う富良野が出場する。14年に16年ぶりに部を復活させた元高校王者でOBの青木賢隆部長(53)の元、ひたむきに技を磨く精鋭たちが、頂点へと駆け上がる。

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富良野少林寺拳法部のメンバーが、一糸乱れぬ演武で、夏の王座を引き寄せる。静から動、動から静へ。両手を合わせてから構えに入り、キレのある動きから一瞬で静止。体育館に気合のこもった雄たけびがこだまする。高校選抜女子団体優勝メンバーの荏原碧(3年)は、まず道予選へ「道内では断然の1位になって、全国2冠につなげたい」と強い口調で話した。

春の全国優勝におごることはない。荏原は「選抜では1位になれたが他のチームはさらに技術も表現力も上げてくる。もっと上を目指さないと」。3年前に春夏2冠を果たした先輩たちの動画を見て研究し「気迫や全員の動きのそろい方が違い、とても参考になる。私たちも、もっと“武”を感じさせる必要がある」とイメージをふくらませている。

部を再生させた情熱ある指導者の思いが、生徒にも浸透している。富良野光明寺道院の道院長でもあるOBの青木部長は富良野高3年時に道勢で初めて高校日本一に。98年を最後に廃部となっていた部を14年に復活させ、17年に女子単独演武で初の高校総体王者を輩出し、19年に女子団体で春夏2冠を達成させた。青木部長の2人の息子もOBで現在、外部コーチとして指導に携わる。女子団体の6人中5人は初心者も、充実した指導で着実に成長。同部長は「みんなが妥協せずに取り組んでくれているからこそ」と、生徒との信頼関係を強調した。

青木部長の「少林寺拳法は人づくりの手段。勝ち負けも大事だが目的は立派な人間になること」という考え方がベース。心を磨き上げる取り組みの延長線上に高校総体がある。荏原は「選抜優勝で、一生懸命やればできることが分かった。でも、まだ終わりじゃない。私たちの代でも2冠を成し遂げたい」。修練を重ね、新たな歴史を切り開く。【永野高輔】

男子組演武・東&藤川 日本一へ「課題克服」

富良野少林寺拳法部は、今春の高校選抜で優勝1、準優勝2を含め6種目で全国入賞する強豪で、今夏は女子団体だけでなく複数種目での日本一を狙う。高校選抜男子組演武準優勝の東蓮翔と藤川峻(ともに3年)は「(選抜は)1つ1つの技の迫力はあったが流れが悪かった。課題を克服し、高校総体は優勝を目指したい」と声をそろえた。規定単独演武準優勝の小野響子(2年)は、高校総体道予選から女子団体演武のメンバーに抜てき。「誇りに思う。日本一に貢献したい」と気を引き締めた。

◆少林寺拳法 高校総体の種目は団体演武、組演武、単独演武の3種目。各演武を正面と4隅の計5人の審査員が、それぞれ技術度60点と表現度40点の計100点で審査する。技術度は6つの構成からなる演武を1構成10点満点で採点。表現度は(1)構成、リズム、節度(2)体構え、立ち方、美しさ(3)気迫、気合、冴え(4)調息(呼吸など)、目配り、残心(心と体を常に準備させているかどうか)の4項目を見て採点される。