阪神、ロッテで活躍した鳥谷敬氏(41=日刊スポーツ評論家)がアスリートに迫る「鳥谷敬VSパリ五輪の星」。第3回は女子レスリング53キロ級で公式戦100連勝を達成したばかりの超ホープ、藤波朱理(18=日体大1年)と白熱トークを繰り広げた。24年パリ五輪金メダル候補の素顔とは-。父俊一コーチにはちょっとした悩みがあるらしく…。【取材・構成=佐井陽介、木下淳】

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藤波の父俊一コーチには今、ちょっとした悩みがある。五輪でセコンドに付く夢のため、いなべ総合学園高の監督から日体大コーチに転身。今春から娘と上京し、2人暮らしをスタートさせたが…。「今は反抗期。意見の衝突も出てくる。家に帰ると気まずいですね。これは想定外でした」。休日も門限を定め「誰と会ってんのか」と心配してしまい、「段々うるさいなとなる」と苦笑いだ。

ただ、いざマットに上がれば厳しい指導に妥協はない。次は9月の世界選手権での頂点に照準を定める。「手足が長くて、距離を取ってのタックルが魅力。3つぐらい金メダルを取って国民栄誉賞をもらえれば、死んでもいいです」と冗談めかした父。今月18日の全日本選抜選手権で優勝する数日前、娘が金メダルを1日早い「父の日」のプレゼントに選んでいたことに、気付いていただろうか。

◆藤波の現状 6月18日の明治杯全日本選抜選手権に優勝して公式戦100連勝。2連覇が懸かる9月の世界選手権(セルビア)代表に内定した。53キロ級には東京五輪金メダルの志土地(旧姓向田)真優もおり、強力ライバルを倒した先にパリ五輪金メダルがある。

◆藤波朱理(ふじなみ・あかり)2003年(平15)11月11日、三重県四日市市生まれ。88年ソウル五輪代表候補だった父俊一コーチの影響で4歳から競技を始める。中学2年の全国大会決勝で伊藤海に負けて以来、全勝。いなべ総合学園高から今春、日体大に進んだ。21年10月の世界選手権で日本勢の高校生では5人目、史上2番目の年少世界王者に。総合格闘家の兄勇飛(26)も17年の世界選手権男子フリースタイル70キロ級銅メダル。164センチ。