21年全日本選手権6位の渡辺倫果(20=法大)が3位につけた。

冒頭のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)は転倒したが、ルッツ-トーループの連続3回転などを成功させ、3つのスピンとステップは最高のレベル4。60・14点をマークし「試合直前は正直、自分のスケート人生の中で一番、調子が悪かった。気持ち的にはしんどかったし、アクセルを失敗したけれど(3回転半を組み込み)挑戦した状態で他のジャンプを着氷できたのは、大きな成長につながるかなと思います」と前向きに振り返った。

「本当に久しぶりにスケートが嫌になってしまって…」-

今季に向かう過程で苦しんだ時期があった。トレーニングを担当するコーチに悩みを相談し、こんな言葉を授かった。

「『スーパーヒーロー』は成功だけじゃなく、失敗や敗北を味わって、最終的にハッピーエンドを迎えるでしょう? 『スーパーヒーロー』がかっこいいのは、失敗があったから。失敗や敗北はかっこいいことだから。あなたは今、一番かっこいいよ」

追い込まれていた渡辺の心は救われ、この日は3回転半に挑戦しながら、失敗後も演技をまとめられた。

昨季は全日本選手権6位と大きな飛躍を遂げた。今オフ、アイスショー「ドリーム・オン・アイス」で新プログラムを披露すると、ファンから「雰囲気が好きです」などと反応が届いたという。周囲の視線が集まる立場になったが、その環境を渡辺は楽しんでいる。

「ご意見とか『もっとこうした方がきれいに見える』とか、言ってくださる方がいます。それを1個ずつ拾っていって、さらに魅力的になっていきたい。『皆さんで作っていく渡辺倫果のスケート』を楽しんでいます。背負うっていうのは荷が重いけれど、受け入れるというか、取り入れる感じです」

14日のフリーでは、大技の3回転半を2本組み込む予定という。

「夏のこういう初戦とかは課題が多く残る試合。1つずつつぶしていって(12月の)全日本選手権に合わせていきたいと思います」

「スーパーヒーロー」となる日を信じ、山あり谷ありの道を進む。【松本航】