テニスで、19日から女子の東レ・パンパシフィックオープンが、10月3日から男子の楽天ジャパンオープンが、ともに有明コロシアムおよび有明テニスの森公園で開幕する。日本テニス界にとって、待望の国際公式戦の国内開催だ。両大会ともに、19年を最後に、新型コロナウイルスの感染拡大による入国制限で、20、21年大会の開催を中止せざるを得なかった。

両大会ともに3年ぶりの開催となる。しかし、いまだに海外選手の入国は障壁が高く、それをクリアして来日にこぎ着けるのは、主催者に、とてつもない手間と労力が必要とされる。コロナ禍以前と以降では、あまりにも状況は変わった。3年ぶりの開催にこぎ着けた関係者の奮闘ぶりに迫った。

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テニス選手が来日するのには、出入国在留管理庁(入管)が担当する在留資格「興業」が認定され、その後、認定された証明書類を持って「就業査証(ビザ)」を申請。そのビザが発行されて、初めて来日がかなう。そして、コロナ禍の現在、その手続きに、本来なら半年近くかかると言われた。そこまでは、上回で詳しく触れた。

ただ、テニスだけが特別ではなく、他の競技も同様ではないかという疑問もわく。サッカー、ラグビーなどの他の競技は、テニスに先駆けて、国際大会を開催していた。今年の8月には、バドミントンは世界選手権を東京で開催した。

ただ、テニス以外の大半の競技は、ひとつの団体として来日し、出入国の期日がはっきり決まっているパターンだ。テニスと似た個人競技のバドミントンも、基本は各国協会単位での出入りだ。個人がバラバラに自由に出入りをするわけではない。

21年に、東レと楽天が開催できなかったのは、これが原因だった。テニスの場合、選手だけでなく、選手のコーチやトレーナーら関係者は、期日も、来る国もバラバラで、出国も決まっていないことが大半だ。コロナ禍で、担当役所が出した開催の条件は、同じ飛行機で入国し、入国後は1週間ほど、同便の選手だけで練習することだった。それは、全く受け入れられない条件だった。

また、在留資格やビザも、出入国の期日が決まっており、団体でまとめて申請できれば、個人がバラバラに申請するよりも、はるかに手続きは楽だという。開催を模索していた協会の担当者は、役所から暗に「そういう大会は開催しないでほしい」という意味を含んだメッセージを受け取っていた。

今年、開催に向けて、楽天と東レの担当者が、来日する選手や関係者のビザを申請した数は、楽天で約300人、東レで約200人。合計約500人の数に上った。日本サイドの担当者の熱意にほだされ、外務省、法務省などの役所も、可能な限りの協力を惜しまなかった。

楽天ジャパンオープンと同週に開催されるカザフスタンの大会は、楽天よりも上位選手が多いという指摘もある。しかし、入国に関して、これだけ煩雑な手続きを取らなくてはいけないことを考えると、選手がカザフスタンを選ぶ心情も致し方ないだろう。また、同国テニス協会のウテムラトフ会長は、ナザルバエフ大統領の顧問だ。鶴の一声で、どうにでもなる。(続)

◆東レ・パンパシフィックオープンは9月19日から25日まで。楽天ジャパンオープンは10月3日から9日まで、WOWOWで全日生放送。WOWOWオンデマンドでも同時ライブ配信される。