阪神、ロッテで活躍した鳥谷敬氏(41=日刊スポーツ評論家)がアスリートに迫る「鳥谷敬VSパリ五輪の星」。

第6回はスポーツクライミング女子のホープ、伊藤ふたば(20=TEAM au)の今に迫った。東京五輪は代表選考基準を巡る裁判の末、不運な形で出場チャンスを逃した。2年後のパリに向けた本音を聞いた。【取材・構成=佐井陽介、松本航】

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鳥谷氏のボルダリング挑戦は、壁に触れる前から驚きの連続だった。用意されたクライミングシューズに足を入れ「えっ、きつい…」。普段の靴と同サイズだったが、選手はさらに1~2センチ分、小さい物を履く。足先を靴の中で丸め、壁に触れるのは第1関節付近。「こうやって履くので…」と苦笑いする伊藤の爪の下にはタコがあった。

体験も一筋縄でいかない。他競技ではスポーツ万能ぶりを披露してきたが「つかめないって、これ…」と小さなホールド(突起物)に苦戦。腕を震わせながら伊藤の助言で完登した。

対談終了後はアスリート目線での気づきもあった。

鳥谷氏 アザはどうやってできたんですか?

伊藤 登っている時、違うホールドに脚をドーンとぶつけたり…。かかとをかけた時に膝が残って「バキッ」と靱帯(じんたい)を損傷したこともあります。

しなやかな登りの裏に、骨折を10度経験してきた鳥谷氏も驚く苦労があった。

 

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◆伊藤(いとう)ふたば 2002年(平14)4月25日、岩手・盛岡市生まれ。小3から父の影響で競技を始める。パナソニックCMで女優の綾瀬はるかと共演も。17年ボルダリング・ジャパンカップに史上最年少14歳9カ月で優勝。岩手・盛岡中央高を経て21年からプロ。好物はガトーショコラ。161センチ。

 

◆伊藤の今季 国内のパリ五輪強化選手トップのSランク(2人)に位置。ボルダリングW杯6戦、リードW杯6戦に出場し、最高はボルダリングが4位、リードが14位。10月20~22日には地元の盛岡市でパリ五輪と同じ方式となる複合W杯が行われる。五輪代表選考は23年から本格化する。

 

◆スポーツクライミング 2人で高さ15メートルの壁を登る速さを競う「スピード」、高さ4~5メートルの壁に作られた複数の課題(コース)で制限時間内の完登数を争う「ボルダリング」、高さ12メートル以上の壁で登った高さを競う「リード」の3種目で構成。東京五輪は3種目の複合を実施。パリ五輪は「スピード」の単種目と「ボルダリング」「リード」の複合が行われる。