スピードスケート女子の18年平昌オリンピック(五輪)500メートル金メダリストで、引退レースを22日に迎える小平奈緒(36=相沢病院)が20日、心境を打ち明けた。

「体の状態も含めて、氷とのやりとりがマッチしてきた。自分の感覚と、氷から受け取る感覚が意気投合したような。ここ1週間くらいで、そう感じ取れるようになりました。最後まで仲良く滑りたいなと思っています。ありのままでリンクの上に立っていたいなと思っています」

現役ラストレースに選んだ全日本距離別選手権の会場、長野市エムウェーブで公式練習に参加。地元で約1時間の調整を終え「おかげさまで順調です」と笑顔を見せた。

一方で氷上では、感情の高ぶりを抑え、集中を極めた。「本当に夢中になれていたので、感情の扉が開く隙がなかったのかな」。大会2日目の女子500メートルに向けて充実の仕上がりをうかがわせた。

会場は固定6500席のうち収容数6400人で準備。ほぼチケットは完売した中、前売り券の追加と当日券の販売が決定した。入場無料の中学生以下を含めて、さらなる来場が予想されており、小平の最終戦が行われる22日は超満員になる見通しだ。

長野市オリンピック記念アリーナ(エムウェーブ)の施設職員は「ここの満員は(98年の)長野五輪以来ではないか」と説明。最高の花道に小平は「リンクの環境も含めて、すごくいい氷を作っていただいた。会場の皆さんがいつもよりたくさん入ってくださるということで、リンク内の気温とかも変わってくると思うんですけど、そういうことも予想して準備を進めてくださっていると思うので、全身で感じ取りながら」と感謝の念を口にした。

今月3日に練習公開した時も、このリンクで行われた長野五輪の感動の再現を夢に描いていた。

「もともと500メートルは土曜日だったんですけど、いつの間にか金曜日に追いやられてしまって…」と笑いながら、再び休日に返り咲かせてのラスト滑走に、こう思いを込めた。

「いつも閑散とした中で滑ることが多かったんですけど、こうして土曜日に戻ってきたような形で、特に地元の皆さんが『見に行くよ』と言ってくださって。長野で生まれて、長野で育ってきた、信州で育ってきた私としては、本当にありがたいなと思います。長野五輪は画面越しでしか雰囲気を感じ取れていないんですけど(満員の会場で)下から皆さんの顔が見られることが、どういう状況なのか体験してみないと分からない。イメージしていた通りなのか、それとも違った景色が見られるのか、楽しみにしています」

4月に現役引退を表明。例年であれば、シーズン開幕戦にピークを合わせることはなく、難しいが、女王は整えてきた。

「たくさん練習しすぎないように、でも体はしっかりと絞り上げられました。メンタル的な部分は、意外と、ちゃんと締め切りに間に合うんだなと。皆さん(報道陣)も経験あると思うんですけど、書き上げるために、そこに向けて集中するような感覚で仕上がってきています。動物的な反応を自分自身にも期待していて、たくさん食べ過ぎないように、というか、肉体に集中が注がれるように、ハングリーな気持ちでここまで来られています。腹七分くらいですかね」

万感の思い、万全の状態で1本に懸ける女子500メートルまで、あと2日。競技は午後0時5分から始まる予定だ。【木下淳】