ショートプログラム(SP)6位の渡辺倫果(20=法政大)が大逆転で、18年紀平梨花以来、日本勢2人目となるGPシリーズデビュー戦優勝の快挙を成し遂げた。

フリー134・32点をマークし、合計197・59点。演技後の取材中には表彰台が確定し「あ~うれしいです! 表彰台は、この大会での目標にしていた。自分の目標がこうやって今かなったので、NHK杯ではもっともっと頑張って、ファイナル(12月、トリノ)を目指せるように頑張りたいです」と口にした。その後に優勝が決まった。

冒頭でトリプルアクセル(3回転半)を着氷させると、7つのジャンプを全て降りきった。回転不足など細かなミスがありながらも、スピン3つは全て最高のレベル4を記録した。

「公式練習が終わって、1人で外を歩いている時に緊張で泣きそうになっていた。リンクインした時には、いい集中力で落ち着いていた。その点でいい演技ができて良かったかなと思っています」

演技後は両拳をゆっくりと振り下ろし、氷に頭を寄せながら喜びをかみしめた。

前日のSPでは武器のト3回転半の着氷が乱れたが、演技後の取材エリアでは、終始ハキハキと前向きに楽しんでいる様子がうかがえた。

「ネガティブに考えてもいいことがない。反省点をもちろん踏まえてやっていくけれど、そこはポジティブに考えていかないと、私はうまくいかない方。まあまた頑張っていきます!」

自己分析をしっかり。初の舞台でも貫けていた。

その姿勢で逆境も乗り越えてきたのだろう。

「エモいですね」

初出場の舞台がカナダに決まったことに、感慨を浮かべていた。

中学3年生から高校生活を過ごしていた土地だが、新型コロナウイルスが運命を変えた。帰国せざるを得ず、再入国のために再渡航したのは2年前。条件を満たしてないと現地の空港で非情な通告を受け、入国を拒否された。

日本を拠点にすることを選び、現在は法大に通いながら練習を続ける。大技の安定感は増し、技術を磨いて、今度は日本代表としてカナダに帰ってきていた。

GPシリーズは出場なしの予定が2戦出場が決まっている。次戦は第5戦NHK杯(11月18日開幕、真駒内セキスイハイムアイスアリーナ)だ。

「NHK杯ではトリプルアクセルをフリーで2本入れられるように、残りの3週間で練習していきたい。未来の自分が、今の自分を超えられるように頑張っていきたいと思っています」

初優勝の喜びを、未来につなげていく。(ミシソーガ=阿部健吾)