11月からウインタースポーツが本格化する。26年ミラノ・コルティナ(イタリア)冬季オリンピック(五輪)から正式種目になる山岳スキー競技で五輪出場を目指す新潟市在住の遠藤健太(28=シアンス)は、日本代表に選出されて23年世界選手権(2月26日~3月4日、スペイン)に出場することが決まった。19年の世界選手権、今年3月のワールドカップと世界舞台を経験。4年後を見据えた飛躍のシーズンにする。

世界選手権は五輪出場へ絶好の腕試しになる。遠藤は「上位で戦えるように準備をする」と力強い。初出場の19年(スイス)、コロナ禍で日本が派遣を見送った21年(アンドラ)に続いて3度目の日本代表入りになる。さっそく11月中に競技仲間とともに国内で強化合宿を行う。世界選手権前には日本選手権(23年1月28、29日、富山・宇奈月温泉)があり、仕上がり具合を確認できる。これまで世界選手権での最高は昨年のインディビジュアル4位。「もちろん優勝を狙う」と国内トップになって世界に乗り込むプランを描く。

今年3月のワールドカップ(イタリア)は五輪種目のスプリントで46位だった。標高など山のコンディションに対応できなかった。「山間部に住んで生活と競技を密接にしたい」。現在は地元の新潟市に在住だが湯沢町、群馬県の片品村、長野県の白馬村などを候補に移住を検討中。競技力向上のための環境作りに着手する。

陸上競技サークルに入っていた拓大3年の時に雑誌で山岳スキー競技を知った。「直感的に『これだ』と思った」。雪山をスキーで昇降し、滑降する過酷な競技だが「できなかったことができるようになったり、苦しい中で走り切ったときの達成感がいい」と夢中になっていった。

19年世界選手権はバーティカルで56位だった。世界の壁の厚さは知っている。越えるための刺激を与えてくれたのがJ2新潟だった。もともと高志高までサッカー部でアルビレックスを応援していた。J1昇格を決めた10月8日の仙台戦はスタンド観戦。「昇格の瞬間を見て、『俺も』という気になった」。目標達成する喜びを肌で感じさせてもらった。「世界選手権の先に五輪がある。それなら、目指すだけ」。難関にも臆せず挑む。【斎藤慎一郎】

◆遠藤健太(えんどう・けんた)1994年(平6)6月9日生まれ、新潟市出身。松浜小3年からサッカーを始め、高志高(現高志中教校)で県高校総体で準V。拓大3年からスキーを始め、17年から山岳スキー競技。2月の日本選手権はスプリントで準々決勝進出、インディビジュアル6位。新潟市のIT企業「シアンス」でシステムエンジニアとして勤務する。164センチ、55キロ。

◆山岳スキー競技 雪山に設定された昇降コースを滑り止めのついたスキーでの滑降や、スキーを外した状態での走行などで速さを競う。正式名称の「Ski Mountaineering(スキーマウンテニアリング)」を略して「SKIMO(スキーモ)」と呼ばれる。個人種目は麓から頂上へ向かう「バーティカル」、滑り止めを付けたスキーでの走行、ブーツでの歩行、スキーでの滑降を合わせた「スプリント」、山頂までの昇降を複数回行う「インディビジュアル」などがある。ミラノ・コルティナ冬季五輪では男女の個人戦スプリントと男女混合リレーが種目になる予定。