関学大が早大を34-17で下し、過去最多に並ぶ5連覇を遂げた。史上最多を更新する33度目の優勝となった。前半はFG2本で先行したが苦戦も、後半、RB前島仁(3年=関西学院)の3TDなどで突き放した。前島が大会MVPに選ばれ、ミルズ杯(年間最優秀選手賞)はDLトゥロターショーン礼(3年=関西学院)が獲得した。

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第4クオーター(Q)残り4ヤード。前島はボールを持ち、中央を突破した。えんじ色のユニホームをまとう相手をすり抜け、エンドゾーンまで駆け抜けてTD(タッチダウン)。これが関学大2本目のTDだった。大舞台でヒーローとなった前島は「オフェンスでのTDだけでも喜ばしいのに、しかも自分が立役者になれるとは。うれしいです」と笑みをこぼした。

今季、関学大はオフェンスの課題を抱え続けていた。秋季リーグの関大戦は17点、立命館大戦では10点。いずれも目標の「3TD」には届かず、大村和輝監督(51)も「今季1回もやりたい試合ができてない」と厳しい評価を下していた。

納得のいかないまま、時間だけが過ぎていく。ディフェンスに頼らず、オフェンスで勝ちきる試合がしたい-。攻撃陣の気持ちは、甲子園が近づくたびに強くなっていた。

リーグ戦よりも1Qにつき3分長くなる甲子園ボウル。関学大は最強の王者を目指し、目標を「4TD」にあげて臨んだ。7年連続でたどり着いたこの舞台。前半こそ相手の守備に苦戦して2FGに終わったものの、後半は王者らしいプレーで圧倒。第4Q4分12秒、同10分53秒に、敵陣残り数ヤードの場面で前島が中央を突破してTDを決めると、同14分22秒には30ヤードのTDランも決めた。

前島1人で「3TD」。目標の「4TD」達成へも貢献した前島には、身近に目標とする存在がいた。父純氏だ。純氏は、関学大のRBで同ボウル2度の優勝に貢献。93年、3年生でミルズ杯も獲得していた。

「年代が違うので、負けたくない-というよりかは、尊敬の方が大きいけど、(大学に入って)父がどれだけすごいかを、しみじみと感じます」

父と同じ年齢、同じポジションで舞台に立った。純氏は、偉大だが「優しく同じ目線で話してくれる」存在でもある。日本一をかけたゲームを前にしても「俺はやったぞ。大舞台で走ったぞ」と冗談交じりに言うだけだったが、本人は「息子も走れという意味だったと思う」と、思いを確かに受け取っていた。

偉大な“先輩”から背中を押された前島は、実際、この日139ヤードを走り、大会MVPにも選出された。それでも、前島の中ではつかえるものがある。ミルズ杯の父を超えられていない-。「来年絶対に」と期す彼の目の奥には、闘志が燃える。関学大には、エースQB鎌田を始め、実力のある3年生が大勢いる。来年は、前島らがチームを率いる立場となり、同ボウル初の6連覇へ突き進む。【竹本穂乃加】

○…ミルズ杯に選出されたトゥロターは「めちゃくちゃうれしい」と喜んだ。秋季リーグ後半からのメンバー入りとなったが、188センチの体格を生かして活躍。この日も、2回QBサックを決めてチームの勝利に貢献した。「来年はもっとパワーアップして戻ってきたい」。強気なDLは、これからまだまだ強くなる。

▽関学大主将のOL占部 素直にうれしい。ここ2カ月間、夜は寝られないし、朝もバッと起きてしまって。やっと腹から笑えた。

◆表彰選手 ▽ミルズ杯(年間最優秀選手)=関学大DLトゥロターショーン礼(3年)▽甲子園ボウル最優秀選手=関学大RB前島仁(3年)▽同敢闘選手=早大DL山田琳太郎(4年)