昨年12月の全日本選手権でペア優勝&男子シングル7位の森口澄士(21=同志社大)が、個人2位に入った。162・87点をマークし、力強い演技で会場を魅了した。

熱演を披露し、涙を流して喜んだ全日本から1週間半。「ずっとふわふわしていて、いまだに忘れられないくらい」と胸の高揚がおさまらない中、北の大地でも見せる演技は健在だった。

1本目のトリプルアクセル(3回転半)-2回転トーループの連続ジャンプを決めると、後半には3回転サルコー-2回転半-2回転半の3連続ジャンプも成功させた。高い跳躍と安定感のある着氷がさえ、ジャンプ7本を危なげなくそろえた。

「大きなミスなく終えることができて、自信につながると思います」

明るく振り返る声色に、充実感が漂った。

昨年クリスマスの全日本では、村上遥奈(14=木下アカデミー)との「はるすみ」ペアで初優勝を飾ると、約4時間後の男子シングルフリーでも165・32点を記録。“二刀流”として鉄人ぶりを発揮し、大きな反響を呼んだ。

「さらにたくさんの方に応援していただけると実感できて、うれしい気持ちでいっぱいです」

大舞台での躍動に心を揺さぶられたのは、ファンだけではない。木下アカデミーの後輩たちからも、声をかけられた。

「『すごいね』『俺も頑張るわ』と言ってくれる子もいたので、また頑張ろうって思いますし、頑張ってよかったなとも思います」

日ごとに注目度が増す中、欲が出たり、重圧にひるんだりすることはない。変わらない思いがある。

「かっこいいジャンプを見せたいという気持ちで、いつもやっています」

目の前の人を喜ばせたい。テレビの向こうで見守る人へ届けたい。そこに大会の大小は関係ないと思っている。

森口は3月の世界ジュニア選手権(カナダ・カルガリー)で、ペアでの出場を控えている。モチベーションの浮沈は、みじんも感じていない。

「もともと世界ジュニアまでは気を抜かずに、3月まで走りきろうと思っていたので、気持ちが落ちるとか、(全日本の)試合が終わったからということは、あまりないと思います」

疲労感がある演技後でも、笑顔を浮かべて誠実に話し続ける姿に、実直な人柄がにじむ。

昨年末の12月29日に21歳になった鉄人は「まだまだ若いと言い聞かせて頑張っていきたいです」と優しく笑った。年齢を重ねても、柔らかく、たくましく、氷上を舞う。【藤塚大輔】