来年のパリ五輪予選として開催されるワールドカップ(W杯)バレー開幕(9月16日)まで、100日を切った。バレーボール女子日本代表を率いる真鍋政義監督(59)が臨んだ、侍ジャパン前監督の栗山英樹氏(62)、サッカー日本代表の森保一監督(54)との初“サミット”。後編はメンバー選考、チームマネジメントなどを語り合い、勝負の舞台に向け大きな刺激を受けた。【取材、構成=勝部晃多・古川真弥・岡崎悠利】

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3月27日に発表されたバレー女子代表登録40人は現在、約半分まで絞り込まれている。古賀紗理那、石川真佑らを枢軸に加え、ミドルブロッカーの荒木彩花、代表歴代最高196センチの日米ハーフの小林エンジェリーナ優姫ら初選出組もメンバーに残る中、五輪予選に臨む14人を見極めていく。

真鍋 これは世界共通なんですが、バレーの代表活動は、毎年4月から約半年間なんです。期間があるので、集合して初めの1~2カ月は様子見で、3カ月以降から本当のチームがガチっとはまる。今はまだ集まって2カ月ぐらいなのでいろいろ見て、検討している段階ですね。

バレー、野球、サッカーそれぞれ代表活動は異なるが、メンバーを見極めるという仕事は、3監督共通。WBCで母が日本人、父が米国人のメジャーリーガー、ヌートバーを起用した栗山監督の目は、同じ日米ハーフのエンジェリーナに留まった。

栗山 エンジェリーナ選手は、真鍋監督が抜てきされたと聞きました。ヌートバーは2~3年したらメジャーで確実にスター選手になると思っていたので、その力を評価して選んだんですが、彼女はものすごい実績を持っているというわけではないんですよね? 素材型という感じですか?

真鍋 そうですね。無名で弱い大学でバレーボールをしていました。きっかけはバスケットボールに携わる方から「真鍋さん、アメリカに日本国籍を持った身長の高い選手がいてるよ」って教えられて。映像をもらって調べ上げたんですが、身長が196センチ。高さはやっぱり大きな武器なので「ぜひ来てほしい」と。そこから始まりました。

森保 選手1人1人の伸びがチームの伸びになるわけですから、エンジェリーナ選手も含めて、これからチームにどんな化学変化が起こるか、すごく楽しみな状況ですね。

日本代表監督という立場は同じでも、取り組み方は三者三様。だからこそ、刺激や気付きにもなる。3人の中で唯一、女子選手を率いる真鍋監督のアプローチも、そうだった。

真鍋 女性の集団の中にいますから、伝え方もやっぱり考えます。いろんな気遣いとかコミュニケーションは、男性の選手よりもこまめに取るようにしていますね。

森保 (女子監督を)やったことがないので正直分からない部分がほとんどですが、今とは違うマネジメントが必要なのかなとは思います。

栗山 ちょっと想像もつかないですね。我々の感覚で何かを伝えても、その捉え方が想像がつかないので難しいですよね。

森保 でも男性であれ女性であれ、個々を尊重するのが大切というのは基本的に同じなのかなと。チームスポーツですけど、やっぱり個から成り立っている。選手1人1人に寄り添ってマネジメントしていくっていうのは、変わらない点かなと思います。

栗山 確かにそうですね。

真鍋 そのとおりで、その姿勢がなければ、そもそも監督というものを務められないと思っています。

いくつもの決断を下し、世界で勝つチームを作り上げる代表監督。自分のための時間はほとんどない。

森保 たとえば本も持っていきますけど、大会中はサッカー漬けで読んだことはほぼない(笑い)。1日を終えて、癒やしの時間みたいなリセットする時間があってもいいかなと思ったりしますけど、寝たらリセットできるので(笑い)。

真鍋 今も合宿や試合が続いていますけど一緒ですね。本を読むタイミングもなかなかないんですよね。

栗山監督はWBCであるノートを読み込んでいた。

栗山 いろんな本を持ち込みましたけど、野球界の大先輩が書いたノートをずっと読んでいました。

森保 三原(脩)さんのノート?

栗山 そうですね。新しい資料も出てきて。今回は野球人全員の夢である「アメリカを倒したい」っていう思いがあったもんですから、野球の原点や歴史、そこにすごく特化して、読みながらメモをとって、考える時間を大切にしていました。

初“サミット”の最後は、パリで12年ロンドン以来の五輪メダル獲得を目指す真鍋監督へ、栗山、森保両監督がエールを送った。

森保 選手としても監督としても、経験も実績もある方なので、一国民として本当に応援しております。アクシデントなく、真鍋さんが思ったようなチーム作りが進むように願っています。

栗山 あれだけの実績を残されていて、またさらにっていうのは、我々も勝手に期待してしまう部分があります。僕も監督をやらせてもらって、本当に大変な仕事だと理解しています。真鍋監督の健康だけをただただ祈って、楽しんで応援させてもらいたいと思いますので、ぜひ頑張ってください。

エールを受けて、真鍋監督は襟を正した。

真鍋 ありがとうございます。9月からオリンピック予選が始まりますけど、ぜひ今年、出場権を獲得して、パリオリンピックでメダルを取れるようにベストを尽くしたいと思います。よろしくお願いします!(おわり)

 

◆パリ五輪への道 出場枠は開催国フランスを含む12。9月に開催される五輪予選W杯バレーは、世界ランキング上位24カ国が8カ国ずつ3組に分かれ、日本など3都市で対戦。各組上位2カ国が出場権を得る。ここで獲得出来なかった場合は、五輪予選で出場権を獲得した6カ国とフランスを除く世界ランキング上位5カ国が出場権を得る。日本がW杯バレーで出場権を逃した場合は、ランキングのために来年のネーションズリーグでポイントを重ねていくことが必要となる。

 

○…真鍋監督、栗山監督、森保監督が6月11日午後10時から放送の「Mr.サンデー」(フジテレビ系)で、令和の“理想の上司”像をテーマに語り合う。日本代表監督3人による三者三様のリーダーシップ論。職場で悩めるすべての人にとって役立つヒントをお届けする。

 

◆真鍋政義(まなべ・まさよし)1963年(昭38)8月21日、兵庫県生まれ。大商大高-大商大。86年に新日鉄(現日本製鉄)入社。セッターで活躍し、85~03年日本代表。05年に引退。09~16年女子代表監督。10年世界選手権、12年ロンドン五輪で銅。16年12月、姫路のGMに就任。21年10月に再び代表監督に就任。

 

◆栗山英樹(くりやま・ひでき)1961年(昭36)4月26日、東京都生まれ。創価高-東京学芸大。83年ドラフト外でヤクルト入団。90年、引退。通算494試合出場。12~21年、日本ハム監督。12年リーグ優勝、16年日本一。通算684勝。21年11月、代表監督就任。23年3月、WBC優勝。同5月末、任期満了。

 

◆森保一(もりやす・はじめ)1968年(昭43)8月23日、長崎県長崎市生まれ。現役時代は日本代表で国際Aマッチ35試合1得点。12年から17年まで広島を率いJ1で3度優勝。17年11月に東京五輪監督に就任し本大会4位。18年7月からA代表監督。19年アジア杯で準優勝、22年W杯カタール大会でベスト16。

 

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