世界ランキング2位の小田凱人(17=東海理化)が全仏オープン(OP)で初優勝を飾り、4大大会を初制覇した。

世界ランキング1位のアルフィー・ヒューエット(25=英国)を6-1、6-4で下した。17歳33日での4大大会制覇は、男子同種目で史上最年少記録となった。

序盤から持ち前の「攻撃的なショット」がさく裂した。両コーナーへスマッシュを打ち込み、第1セットを6-1で奪取。俊敏なチェアワークもさえて、第2セット以降も得点を重ねた。1月の全豪OP決勝でストレート負けしたヒューエットにリベンジを果たし、約1年2カ月後に迫ったパリパラリンピックと同じ会場で快挙を達成した。

ずっとレジェンドの背中を追い続けてきた。サッカー少年だった小田は、9歳で左股関節に骨肉腫を発症。左足の股関節と大腿(だいたい)骨の一部を切除した。約1年の入院生活を余儀なくされたとき、ロンドンパラリンピック決勝に臨む国枝慎吾さんの映像に魅了された。「これが一番やりたいと思った」。退院後にラケットを握ると、めきめきと力をつけた。

20年の世界ジュニアマスターズでシングルスとダブルスを制覇。昨年5月の全仏OPで4強に入り、1月の全豪OPでも準優勝した。

競技を始めるきっかけとなった国枝さんは、今年1月に現役を引退。その発表前には、電話で激励を受けた。「『これからも頑張って』という内容を伝えてもらった。うれしかった」。ポスト国枝として、覚悟が固まった。

“後継者”として大きな期待を受けるが、真正面から受け止める。

「プレッシャーはめちゃめちゃ感じる。ただやっぱり、誰もが(後継者と)言ってもらえるわけではないと思う。そう言ってもらえることを信じ、次を担う気持ちでいる。後継者と言われないくらい、ビッグな選手になりたい」

その決意通り、まずは全仏OPで4大大会初制覇を達成。「僕の凱人という名前も『凱旋(がいせん)』という言葉からきている。凱旋(がいせん)門がフランスにあることにも縁を感じる」。来夏には、この地でパリパラリンピックが開催される。

「現役生活はまだまだ長いので、その中でパラリンピックを何回優勝するか、グランドスラムを何回制覇できるかはすごく楽しみ。パリパラリンピックでの金メダルは、何よりも一番大きな目標なので、そこを目指して頑張りたい」

次なる大目標へ、小田の物語はまだ始まったばかりだ。

 

◆小田凱人(おだ・ときと)2006年(平18)5月8日、愛知県一宮市生まれ。サッカー少年だった9歳、左足に骨肉腫を発症。国枝慎吾さんに憧れ、10歳から競技開始。21年に史上最年少の14歳11カ月でジュニア世界ランク1位。22年4月にプロ転向。同5月の全仏オープンに4大大会史上最年少で出場。23年1月の全豪オープン準優勝。同4月に日本生命とのスポンサー契約を締結し、同8月に日本初の国際テニス連盟(ITF)公認のジュニア大会「日本生命 岐阜オープン」(8月10~13日)の開催を発表。

 

◆放送 全仏オープンテニスはWOWOWで連日生放送。WOWOWオンデマンドでは日本人選手の試合が全試合ライブ配信される。