バレーボール男子日本代表の岸翔太郎広報が代表チームのトピックや選手情報などを紹介する「龍神NIPPON広報リポート」。9月から行われるパリ五輪予選のワールドカップバレーまで、チームの舞台裏や秘話をお届けします。

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男子日本代表は、23日まで行われたネーションズリーグ(VNL)で銅メダルを獲得、1カ月半の長い戦いを終えました。今回は広報の視点から、そのVNLで新しく発見したことや強く印象に残ったトピックをお届けします。

まず1つ目は、食事について。高いパフォーマンスを維持していく上で、食事の管理は欠かせません。フランスやフィリピン、ポーランドなどを転々とした今大会。その土地の食べ物での調整が必須となります。選手たちは日本で栄養士から指導を受け、それぞれの体に適した食べ方をしていました。

特に印象的だったのが、水に関して。おなかをくだす可能性もあるので、選択には細心の注意を払います。チームから支給された水をホテルの食事会場に持ち込み、おのおの体に合ったものを摂取。ここまで徹底できるのはさすがの一言です!

また、試合日はトレーナーが試合開始の3時間前に、消化が早くかつエネルギーになる食べ物を用意します。この時間は「スナックタイム」と呼ばれ、日本ではうどんや和菓子などをとります。海外では、その土地で用意できるもの、例えばおにぎりやサンドイッチ、パスタなどで代用します。

こうした食事管理がパフォーマンスを支えているんです! ちなみに、ブラン監督は箸を使って食事をしますが、見事な箸さばき。納豆など、日本食も大好きです。

2つ目は強者のメンタリティー! 今大会の中でも大きなヤマ場だったブラジル戦(6月22日、予選ラウンド第7戦)。公式戦で30年勝てていなかった相手に、フルセット勝利を収めた試合です。驚いたのは、その冷静さ。試合直後は大喜びでしたが、ホテルに戻るとすぐに試合動画やスタッツを振り返っていました。歴史的勝利の後でも「ここがダメだった」などとプレーバック。その日の夜くらい勝利の余韻に浸れば良いのに…とさえ思いますが、彼らにとってはただの通過点だったのです。

さらに、イタリア戦(7月8日、予選ラウンド第11戦)、ポーランド戦(9日、最終戦)の敗戦後も落ち込むことはありません。同じく、すぐにプレーバック。石川祐希キャプテンは大会前、選手だけのミーティングでベスト4という目標を明確にしました。その意識がチーム全員に浸透しているからこそ、このようなストイックなマインドを持てるんだと感じました。

この強者のメンタリティーが、大会史上初の3位という結果をもたらしたのではないでしょうか。

3つ目は、監督と選手の信頼関係です! ブラン監督は普段、あまり細かい指示を与えず、行動を選手に考えさせます。準決勝の前日、監督が初めて、急きょショートミーティングを開きました。ここでは、試合までの過ごし方を選手それぞれに確認。長期戦の疲労を考慮し、ボール練習、ウエートトレーニング、その両方、練習なしの選択肢を提示。選手1人1人にメニューを決定させました。

団体スポーツにおいて、大切な試合の前はチーム練習が常識。練習を個人の判断にゆだねることは、監督と選手間に信頼関係があってこそだと感じました。

ここから、アジア選手権、パリ五輪予選と戦いはまだまだ続きます。これまでの経験を糧に、日々の練習の舞台裏や秘話をお届けしていきます!

◆岸翔太郎(きし・しょうたろう)1990年(平2)5月19日、埼玉県志木市生まれ。小学校からバスケットボールをはじめ、中学時には全国大会優勝。高校、大学と強豪校でバスケを続け、その後テレビの企画制作会社へ。現在は日本バレーボール協会広報部撮影班として、男子日本代表チームに帯同し、チームの日々の練習や宿舎での様子などを撮影中。

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