歴史の扉をこじ開けた-。沖縄などで開催されているバスケットボール男子ワールドカップ(W杯)で、順位決定リーグO組の日本(世界ランキング36位)は最終戦でカーボベルデ(同64位)に80-71で勝利した。アジア勢で1位となったことで、24年パリ五輪出場権をつかんだ。ホーキンソン・ジョシュ(28=SR渋谷)はチームトップの29得点、渡辺雄太(28=サンズ)は40分間フル出場で歴史的勝利に貢献した。自力での五輪出場権獲得は76年モントリオール五輪以来48年ぶり。団体球技ではパリ五輪出場切符獲得第1号となった。日本がW杯で3勝を挙げたのは大会史上初めてとなった。

 

 ◇  ◇  ◇

 

満員に膨れ上がった沖縄アリーナに、歓喜の瞬間が訪れた。日本がカーボベルデを下し、約半世紀ぶりに自力での五輪切符を獲得。団体球技ではパリ五輪出場切符獲得第1号となった。

豊富な練習量で培ったスタミナを武器に、これまで終盤に追い上げる形が目立った日本だが、この日は前半から流れをつかんだ。第2Q(クオーター)序盤にリードを奪うと、途中出場の富永が前半だけで4本放った3点シュートをすべて決めるなど16得点をマーク。先発の河村も精度の高いシュートを繰り出した。

 

高さで優位に立つ相手に対し、日本はセンターのホーキンソンを中心に結束。強固な守備で相手に自由にプレーさせなかった。

 

50-37で折り返すと第3Qに入っても勢いは止まらない。ベネズエラ戦で大活躍のベテラン比江島慎がこの日初得点を奪うと、日本の頼れるキャプテン富樫勇樹も3点シュートを決めた。第4Qに相手の追い上げもあったが、最後は粘りきった。

 

日本のエースとして期待された八村塁(レイカーズ)は、今大会の出場を辞退した。その穴を埋めるように、新鋭の河村やベテラン比江島など、大会を通じて日替わりヒーローが飛び出した。試合を重ねるごとに結束を深め、全員バスケで臨んできた。

 

1次リーグのフィンランド戦で17年ぶりの世界大会白星を挙げ、順位決定リーグ初戦のベネズエラ戦でも逆転勝ちを収めた。奮闘を重ねるたびに、世間からの注目度が上がった。唯一のNBAプレーヤーとしてけん引した渡辺雄太は、「歴史はどんどんつながってる。いままでの歴史の中で、無駄な時間なんて1秒もなかったと思う。僕たちがパリを決めることが、今までずっと頑張ってきた人たちへの恩返し」。その思いを実らせた。

試合後、40分間フル出場した渡辺は何度も「やったぞ!!」とスタンドに向けて雄たけびを上げた。試合後のインタビューでは「最高です。このためにみんな、数カ月、大変な思いしながらがんばってきたんで、やっと報われた気がします。正直不安もありました。みんな、しんどいときでも、ほんとに…」と言うと、目に熱いものが込み上げた。「みんな頑張ってくれたんで、みんなのおかげです。感謝してます」と語った。

前回の東京五輪は開催国枠による出場だった。自力での出場枠獲得は実に48年ぶりだ。日本代表チームの愛称はアカツキジャパン。日本バスケに、新たな夜明けが訪れた。【奥岡幹浩】