ここから巻き返す! 2大会連続の五輪出場を目指す男子日本代表(世界ランキング5位)が、「魔の第3セット」を克服し2勝目を挙げた。チュニジア(同20位)に3-0でストレート勝ち。石川祐希主将(27=ミラノ)がチームトップタイの13得点を挙げ、前戦でエジプトに屈した鬱憤(うっぷん)を晴らした。チームは2勝1敗の勝ち点6で4位。8チーム中2位まで得る五輪切符の獲得ラインは6勝1敗。大会後半には、この日トルコを下し3連勝とした同2位米国など強豪国戦が控える。負けられない戦いが続く。

初戦、2戦目と同じセットカウント2-0で迎えた第3セット(S)。9点差でマッチポイントを握った。相手のサーブがアウトになると、石川の顔に安堵(あんど)の色が広がった。出だしから3連続得点で先行。7-5からは、大会前の腰痛の影響を感じさせないバックアタックを、2連続でたたき込んだ。1度もリードを許さず「魔の第3セット」を取り切り、今大会初のストレート勝ち。試合を通して連続失点も4度に抑え「自分たちのバレーができたのは良かった」とかみしめた。

ここまでの2戦は、ランキング下位相手に2セット連取の完勝ムードが第3S以降に一転。フィンランドにはフルセットで辛勝も、エジプトに大逆転負けを喫した。それでもこの日、主将としてあえて特別なことはしなかった。「一昨日(の敗戦)も3セット目に意識しすぎた」と重圧をかけていたことを反省。「(3セット目も)0-0から始まる。いつも通りシンプルにやればいい」。自然体でぶつかった。

痛恨の黒星を喫しても、すぐに前を向いた。エジプトに敗戦した直後、コート上で選手たちを集めて言葉をかけた。「もう勝つしかないので切り替えよう、と。そこだけは全員が分かって取り組む必要があった」。休養日だった2日には選手のみのミーティングを実施。「こういう状況なので選手1人1人の言葉がきっかけになればと思ってしゃべってもらった」と全選手に現状への意見を求めた。

そして、自らはこう伝えた。「1、2セット目はめちゃくちゃ良いバレーをしていたし、もっと良いところにフォーカスしよう。もっと良い雰囲気でできれば自分たちのバレーができる」。コート内でバラバラになりかけていた意思をつなぎ留めた。この日の試合後、高橋藍は「気持ちが楽になった部分は絶対にあった」とミーティングの効果を口にした。石川の言動が切り替えの契機となり、心機一転の勝利につながった。

8チーム中2位までが得られる五輪切符の獲得ラインは6勝1敗。負けられない戦いが続く。石川は「ここから相手が強くなる。本当にやるしかない」と力を込めた。あらためて1つになった日本が、逆襲へ再スタートを切った。【勝部晃多】

◆W杯バレー順位決定方法 (1)勝敗、(2)勝ち点、(3)セット率、(4)ポイント率の順で決定。勝ち点の獲得条件は【3-0または3-1で勝ち】=3点、【3-2で勝ち】=2点、【2-3で負け】=1点、【1-3または0-3で負け】=0点。

◆パリ五輪への道 パリ五輪出場枠は開催国フランスを含む12。五輪予選のW杯バレーは、世界ランキング上位24カ国が8カ国ずつ3組に分かれ、総当たりで対戦。ブラジル(プールA)、日本(同B)、中国(同C)で開催され、各組上位2カ国の計6カ国が出場権を得る。残る5枠は、来年のネーションズリーグ(VNL)予選ラウンド終了時(6月)の世界ランキングで決定。日本がW杯バレーで出場権を逃した場合はVNLに出場し、ポイントを重ねてランキングをより上位に上げることが必要。W杯バレーでの大陸別の切符獲得状況も、重要な要素となる。