プロならではの技、そして駆け引きだった。
15日に代々木第1体育館で行われたB1、A東京-宇都宮戦は、71-70の1点差で宇都宮が勝った。宇都宮は最後のフリースローをわざと外して、勝利をもぎとった。
第4Q残り3・8秒、得点は70-70。ファウルをもらい、フリースローを得た宇都宮の鵤誠司は、1本目を見事に成功させた。
2本目。ネットを狙うのではなく、ボールを直接リングにあてた。ギャビン・エドワーズがリバウンドにさわり、ルーズボールは比江島慎のところに。比江島が空中にボールを放り投げて、落ちてきたところで試合終了のブザーが鳴った。
このプレーについて、宇都宮の佐々宜央(さっさ・のりお)ヘッドコーチが明かしてくれた。
佐々HC 2本目も成功したら向こうはタイムアウトをとる。サイドラインから攻撃をデザインされたら、3・8秒もあれば、3ポイントシュートを打たれる確率が高い。だったらもう、1点差でプレーを続けて、相手のぶん投げシュートが入ったらしょうがない、と割り切りました。
勝負のアヤもあった。鵤がフリースローを投じる前、審判団が残り時間をタイムキーパーに確認に行ったため、打ち合わせの時間ができた。
佐々HC 話す時間がないからどうしよう、でも誠司は分かっているだろうな、と考えていたら、ちょっと時間ができた。選手をベンチ前に呼んで、1本目入ったら2本目は外そうって。リバウンドの戦術もやっていたし、マイボールになる可能性もあるんだから。
狙い通りの展開になり、2年前から6連敗中だった宿敵にようやく勝った。試合が終わった瞬間、選手、ベンチは一体となって、まるで優勝したかのような喜びぶりだった。
佐々HC 誠司が1本目を入れた瞬間、正直、勝ったなと思いました。意外に難しいんですよ、フリースローを外すのは。入っちゃう時があるんで。でも普通はあの外し方はしないですけど(笑い)。直接的に(リングに)行くと、エアボールするかもしれないじゃないですか。誠司がうまかったというしかないですね。
もしボールがリングに当たっていなかったら、バイオレーション(違反)をとられ、A東京側にタイムアウトと攻撃のチャンスを与えてしまう。ネットには入れずにリングには当て、しかも味方がリバウンドを取りやすいよう、跳ね返りまで計算して投げる。1本目を確実に入れ、2本目を計算通りに外した鵤の心技にうなるしかない。
その鵤は「普通ですよ。意外によくあることです。この前いつやったかは覚えていないですけど」と、あっさり答えた。常に冷静沈着な男は「(A東京は)なかなか勝てない相手だったから、これで波に乗っていければいい」と続けた。
スローワーが鵤ではなかったらどうしていたのだろうか。
佐々HC もちろん、全員同じことをしてます。1本目を決めるっていうのがミソなんで。1本目入らなかったら2本目決めて、相手にタイムアウトとらせて、さあディフェンスがんばりましょう、ということになりますけど。そこは人は関係ないですね。長年バスケットをやっていると結構多い状況で、当然の策。3点差になるんだったら入れます。最悪3Pを入れられても同点で、負けはなくなるので。1点差なのか2点差なのか3点差なのかで、判断は変わってきます。
今季最初の節目となりそうなプレー、そして勝利だった。【沢田啓太郎】


